妊娠中の生活が母親と子どもの体調に与える影響2

子どもの健康のための生活面の注意というと誕生後が中心になっていますが、お母さんの胎内にいるときに受けたことが、子どものときだけでなく、生涯にわたって影響を与えることが多くの研究によって明らかにされています。
その研究成果として、国立高度専門医療研究センター6機関(国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センター)が連携して、「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」を公開しています。その提言のエビデンスの解説から、妊婦に関わる項目を紹介します。
〔2飲酒〕
妊娠中の飲酒については、初期・中期・後期とすべての時期を通して、胎児に悪影響を及ぼすことが報告されています。妊娠中の習慣的な飲酒により引き起こされる胎児性アルコール症候群の症状は多岐に渡りますが、末梢神経障害、歩行障害、言語障害、慢性中耳炎などが特に多く報告されています。
〔3食事1〕
魚介類の摂取により女性は妊娠しやすくなる可能性が報告されています。魚介類やオメガ3脂肪酸摂取により早産および妊娠高血圧症候群のリスクが低下し、また生まれた子どものアレルギー性疾患のリスクが低下する可能性が示されています。
魚介類はよい健康影響を及ぼし、利点が多い食材ですが、一方で自然界に存在する水銀を食物連鎖の過程で体内に蓄積するため、日本人の水銀摂取の80%以上が魚介類由来となっています。また、一部の魚介類については、特定の地域等に関わりなく、水銀濃度が他の魚介類と比較して高いものも見受けられます。水銀に関する近年の研究報告では、低濃度の水銀摂取が胎児に影響を与える可能性を懸念する報告がなされていることから、妊娠中の魚介類の摂食については、厚生労働省から注意喚起がなされています。
厚生労働省が実施している調査によれば、平均的な日本人の水銀摂取量は健康への影響が懸念されるようなレベルではありません。妊婦以外では、すべての魚介類について、現段階では水銀による健康への悪影響が一般に懸念される報告はないため、健康に有益である魚介類をバランスよく摂取し、健康の維持増進に努めることが大切です。