妊娠中の生活が母親と子どもの体調に与える影響1

子どもの健康のための生活面の注意というと誕生後が中心になっていますが、お母さんの胎内にいるときに受けたことが、子どものときだけでなく、生涯にわたって影響を与えることが多くの研究によって明らかにされています。
その研究成果として、国立高度専門医療研究センター6機関(国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センター)が連携して、「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」を公開しています。その提言のエビデンスの解説から、妊婦に関わる項目を紹介します。
〔1喫煙・受動喫煙〕
日本人を対象とした研究では、喫煙により妊娠高血圧症候群などの妊娠合併症が増加し、妊娠中の喫煙により子どもの出生時体重が低下し、早産が増加することが報告されています。また、海外の研究では喫煙により流産、前置胎盤、胎盤早期剥離のリスクも増加するとの報告があります。
一方で、妊娠早期の禁煙により出生体重や早産のリスクが軽減することが報告されており、喫煙習慣がある人の妊娠が判明した場合には、すぐに禁煙することが大切です。妊婦においても一般成人と同様に禁煙を指導することが推奨されています。メタ解析において最も明確な効果を示しているのは行動療法、特にカウンセリングですが、ニコチン置換療法の効果も示唆されています。また、禁煙外来を続けられるように工夫することも重要です。
妊婦の受動喫煙により、妊娠中・産褥期のうつ、早産、生まれてきた子どもの呼吸器障害や発達遅延のリスクが増加するとの報告があります。
受動喫煙により乳幼児突然死症候群のリスクを2〜3倍、肺炎や気管支炎、中耳炎、気管支喘息のリスクを1.5〜2倍増加することが示されています。子どもの受動喫煙は両親の喫煙によることが多いため、幼い子どものいる家庭では両親の禁煙指導をすることも重要です。