学習障害108 聴覚過敏は集団での学習が難しい

自閉症スペクトラム障害に多くみられる感覚過敏の一つに聴覚過敏があります。耳が敏感になって、周囲の音がよく耳に飛び込んでくるという状態だけでなく、通常なら遮断されるか弱まって聞こえるはずの、いわゆる“聞きたくない音”が聞こえて、それが気になって集中できないということが起こります。
人間の聴覚は、耳から入ってきた音を、すべて脳に伝えますが、その中から選択を行っています。耳に入ってきた音は外耳と中耳の間にある鼓膜を振動させて、この振動が内耳に伝わり、振動を電気信号に変換して神経回路を通過して脳に送られます。その電気信号は大脳皮質に送られますが、過去の記憶や活動のための重要度などの判別が行われて、優先度の高い音を集中して聞くようになっています。
例えば、教室では話をする教師の声のほかに、近くでおしゃべりをする声や外からの音、教室内の鉛筆や消しゴムの音、教科書やノートをめくる、椅子を動かすなど、さまざまな音があり、これらの音の中から教師の声に集中していると、他の音は耳に入ってきていても脳が聞かないようにする、弱めて聞くというように調整をしています。
ところが、聴覚過敏では、すべての音もしくは複数の音が強く聞こえてしまいます。他の人よりも大きな、刺激的な音に聞こえるという特徴もあります。音が急に大きくなったときには通常は脳が弱めて届けるようにもなっていますが、そのコントロールが効かないために、予想していない音が聞こえると逃げ出したくなるような気持ちにもなり、実際に逃げ出すような行動を起こす子どももいます。
聴覚過敏で気になりはじめると呼吸の音さえも飛び込んできます。その音が好意を抱いている人のものであったら、それほど過敏に反応はしないものの、あまり好きでない、むしろ嫌いだという人が発した音にはマックスの反応もしかねません。
学校の教室などでは、聴覚過敏の子どもが多くはいなくて、場合によっては1人だけということもありますが、発達障害児が集まって学ぶ学習塾では、静かに学習できないという子どもが集まってくるために、集団での学習は難しくなり、個別でないと対応できないということもあるのです。