学習障害175 読むと書くでは脳の活動が異なる

学習障害は読むことと書くことの困難さがあり、その改善のためのアプローチも、さまざまな方法が実施されています。どの方法が適しているのかを判断するために知っておきたいのが、読むときと書くときの脳の活動の違いです。
読む場合は文字によって使われる脳の回路が異なっています。かな文字(ひらがな、カタカナ)を読むときには「視覚野→左角回→ウエルニッケ領野」という回路で、漢字を読むときには「視覚野→左側頭葉後下部→ウエルニッケ領野」の回路が使われます。
書くときには、かな文字では「ウエルニッケ領野→左角回→体性感覚野」の回路で、漢字では「ウエルニッケ領野→左側頭葉後下部→視覚野→左角回→体性感覚野」の回路が使われます。
左角回は読み書き中枢とも呼ばれる言語中枢で、大脳の前頂葉の外側面にあります。側頭葉は言語、記憶、聴覚に関わっている大脳の一部分で、その後ろの下側が漢字の読み書きのときに盛んに使われています。体性感覚野は大脳の頭頂葉の前側の前頭葉に接する位置にあり、運動に関わる情報を得て、実際に身体を動かすための指令を出しています。ウエルニッケ領野は大脳の左半球にあり、言語を理解する役割があります。
これらの情報伝達がスムーズでないと、視覚野で得た情報が言語として理解されるのに時間がかかり、また理解をした言語情報を文字にするのにも時間がかかることになります。かなに比べると漢字は複雑で、漢字を形として理解して、それを文字として表現するためのルートも複雑であることから、脳の機能の発達に差があると漢字を書くことが苦手となっていきます。
脳は左脳と右脳に分かれていて、左脳は思考・論理の言語脳、右脳は知覚・感性のイメージ脳と説明されています。言語を理解するためのウエルニッケ領野が左脳にあるからですが、男性は左脳が優れていると言われていて、言語では主に左脳を使っています。それに対して女性は言語を左脳と右脳の両方を使って理解するという特性があることから、男性のほうが言語の記憶と、記憶の引き出しに困難さが現れやすいことが指摘されています。