学習障害30 視覚系の課題の困難さ

視覚系の課題が見られる子どもでは、小学1年生でみられるような文字の読み方が高学年になっても続くことがあります。文字を一字ずつ指で辿りながら読んでいくことが年齢を重ねても続いていて、そのために文字を読んでも意味を理解することができないということが起こります。ひらがなは読んで文字全体を書き写すことができても、漢字は部首ごとに書き写していくために時間がかかることになります。
音を文字に変え、文字を音に変えるという変換に困難さがみられ、視覚でとらえたものを書くという視覚−運動系に発達の遅れがある例が多くみられます。文字を追うときには一般には視線を固定して眼球を動かしていきますが、視覚系に課題がある場合には頭を動かしながら文字を追うようになるために、広い範囲を見て、同時に把握するのが困難になります。通常の文字を追うときの基礎的な能力である追視、注視点移行、周辺視などに発達の遅れがある可能性もあります。
視覚系によって短期的に記憶して、それを書き写すというと、視覚系の課題ばかりが注目されがちですが、文字を音として聞き、覚える聴覚系の短期記憶にも遅れがある場合があり、それが視覚系の課題としてとらえられることもあります。読み書きは実際には視覚系と聴覚系の能力をともに発揮して実行していることから、文字が読めない、漢字の習得が困難といった場合には、視覚系と聴覚系の両方から課題を読み解く必要があります。
視覚系に課題があると一つずつの文字を注視するために2文字、文節ごとに見ることができなくなるために逐次読みになりがちですが、拗音(きゃ、しゅにように小書きの文字がつく)も2文字を同時に見ることができないことから、拗音であることが把握できず、拗音の特徴的な発音ができないということにもなります。
こういったことから漢字が読めないままに形を書き写すことになってしまうので、時間をかけて繰り返しても記憶ができず、負担が強くなり、これが学習障害に影響を与えることにもなりかねないのです。