左右の位置どりについての混乱話

左右の呼び名は、誰から見てなのかで違ってくることがあります。京都の右京は御所から見て右なので、通常の南北の地図から見ると逆のように感じます。観光都市京都を案内するバスガイドは乗客の方を向いているので、「右手をご覧ください」と言って左手を掲げて説明します。ある作家団体の観光旅行のときに先に言い合わせておいて、いたずらをしたことがあります。「右手をご覧ください」と言われたときに、一斉に自分の右手を前に出して、ジッと見つめるというパフォーマンスをしました。
ガイドさんはベテランだったので、すぐに「右手方向ですよ」と言ったあとに、「ちなみに左手で示している右手は左京区になります」と切り返してきて、さすが慣れていると感心したものでした。普通ならガイドさんに圧倒されて、いたずらもなしに聞き耳を立てるところなのでしょうが、そこは癖のある作家のこと、各席で“左右談義”を始めてしまい、なんとガイドしにくかったことだろうと、今さらながら思い出しているところです。
京都で左右が気になることというと、お雛様の左右です。全国的には関東雛と呼ばれるもので、男雛が正面から見て左側、女雛が右側です。これに対して、京雛では男雛が右側、女雛が左側となっています。古くは京雛と同じ並びであったのが、平成天皇の成婚のときに関東雛と同じ並びであったことから全国に広まり、伝統を重視する京都では現在の京雛の並びになったと一般に説明されています。一般にというのは、人形店での説明のことです。
もう一つの説は大正天皇が即位のときに右に立たれたことから左右が逆になったというものです。この場合の右は、正面からでは左となります。古来から上位は左とされてきたので、ここで逆転したわけですが、西洋では右側に男性を立つのが一般的なので、それに合わせたということです。この場合の右は正面から見てのことです(ややこしくて済みません)。
これで話は一件落着かと思ったら、そこは作家の団体で、左大臣が右大臣よりも上位で、雛壇では左大臣が向かって右になる、という話が出ました。これで終わりではなくて、童謡の「たのしいひまなつり」では「赤い顔した右大臣」となっているものの、赤い顔をしているのは老齢の左大臣であって、右側にあるので「赤い顔した左大臣が正しい」と教えてくれた先生がいました。