抗酸化成分の種類と働き1

アスタキサンチン
エビやカニなどの甲殻類や鮭、イクラ、鯛などの魚介類や藻の赤色の素となる色素物質です。これらの魚介類はオキアミなどの動物プランクトンをエサにしていますが、動物プランクトンは淡水性単細胞緑藻のヘマトコッカスを食べています。動物はアスタキサンチンを体内で作り出すことができず、植物性のヘマトコッカスの色素を受け継いでいます。鮭は白身魚で、サーモンピンクはアスタキサンチンを溜め込んだ結果です。
鮭は産卵のために遡上するときに大量の酸素を取り込みながら激しく身体を使うために活性酸素が多量に発生し、全身に大きな負担がかかるのですが、これに耐えて子孫へとDNAを残すために強い抗酸化成分のアスタキサンチンを蓄えています。メスの鮭は産卵すると身が白くなるのは卵(イクラ)にアスタキサンチンを移して、活性酸素と戦う生命力を伝えているためです。
アスタキサンチンの抗酸化力はビタミンEの約550倍、β‐カロテンの約40倍とされます。脂肪に溶ける性質があり、血液中のLDLコレステロール(低比重リポ蛋白)の酸化を抑え、動脈硬化を予防し、血管壁を守る作用があります。活性酸素の中で最も毒性が強いうえに、紫外線を浴びると皮膚の細胞で発生する一重項酸素に対して消去効果があることから、シワやシミの予防、肌荒れの抑制に作用します。抗酸化成分は、その種類によって細胞膜で作用する部位が異なることが研究によって明らかにされています。
ビタミンEは細胞膜の内側に作用し、β‐カロテンは細胞膜の中心部で作用するのですが、アスタキサンチンは細胞膜を通過して細胞膜の中心部から表面まで抗酸化作用を発揮します。アスタキサンチンは抗酸化作用が強いだけでなく、幅広く細胞膜を活性酸素の害から保護するため、全身の細胞を効果的に守ってくれます。ヘマトコッカスは、クロロフィルが多く含まれることから緑色をしていますが、窒素を欠乏させるとアスタキサンチン(ヘマトクローム)が多く含まれる胞子ができます。アスタキサンチンの多くは現在ではヘマトコッカスから抽出されています。機能性表示食品では、抗酸化作用による眼の機能向上が表示されています。