日本人は食物繊維が足りない

日本人の腸の長さは、野菜をはじめとした消化に時間がかかる食物繊維が多い食品を食べるのには優位でしたが、今では、その利点が活かされていないようです。
食物繊維の目標として「日本人の食事摂取基準」(2020年版)では1日に男性では20g、女性では18gがあげられています。これは少なめな量で、理想は24gとされています。それ対して、実際の摂取量は男性が19.4g、女性が17.5g(令和元年国民健康・栄養調査)と目標量には達していません。以前は、もっと不足していて、食物繊維の重要性が知られるようになってから少しは増えてきています。20gの食物繊維を摂るためには野菜の摂取量として350gが目標値とされています(厚生労働省「健康日本21(第二次)」)。ところが、実際の摂取量は男性が269.8g、女性が276.7g(令和元年国民健康・栄養調査)と、やはり目標量には達していません。
1日に20gの食物繊維というと、昭和22年(1947年)には27g、昭和30年(1955年)には20gとなっていたので、その当時の摂取量を目指しているわけです。食物繊維を摂るように示されると野菜の葉や根の部分を食べることを考えがちですが、これらの量は昭和30年と同様の量を摂っています。足りていないのは穀類、豆類、キノコ、海藻類の食物繊維で、これらの食物繊維を増やすことを考えるようにします。
食物繊維には、水に溶けない性質の不溶性食物繊維と、水を吸収して膨らむ性質の水溶性食物繊維があります。不溶性食物繊維は腸壁を刺激し、腸内の有害物質を排出する作用があり、便の量を増やして便秘を予防する働きがあります。不溶性食物繊維は腸内細菌によって発酵しやすく、善玉菌を増やして腸内環境を改善します。ボソボソした食感が特徴で、多く摂りすぎると便を硬くする作用もあります。水溶性食物繊維も善玉菌を増やす作用があり、便を軟らかくする作用もあります。これらの食物繊維をバランスよく摂ることが大切になるということです。