発達栄養学109 脂肪は摂るタイミングで太り方が異なる

飲食で摂ったエネルギー源のエネルギー量(摂取エネルギー源)の合計と脳と身体のために使われるエネルギー量(消費エネルギー量)の合計を差し引きして、摂取エネルギー源のほうが消費エネルギー量よりも多ければ脂肪細胞の中に蓄積される中性脂肪が多くなります。それとは逆に、消費エネルギー量のほうが摂取エネルギー量よりも多ければ、不足する分を蓄積された中性脂肪を分解して使うという関係になっています。
これは大原則ですが、1日の飲食で摂ったエネルギー量が同じであっても違う結果になることがあり、必ずしも摂取エネルギー量と蓄積される体脂肪の量が比例するわけではありません。その大きな要因としてあげられるのは“エネルギーロス”です。
食品に含まれる脂肪は、そのまま脂肪細胞に入るわけではありません。中性脂肪は脂肪酸3個とグリセロール1個で構成されていますが、消化されたときには脂肪酸とグリセロールの結合が溶けて、吸収によって血液中に入った脂肪酸は細胞に運ばれてエネルギー化されるものと、肝臓に入るものに分かれます。肝臓では脂肪酸を中性脂肪にする働きのほかに、ブドウ糖とアミノ酸から脂肪酸が合成され、その後に中性脂肪が合成されます。
脂肪酸が中性脂肪に合成されるときには、似たような構造に変換されるため、脂肪合成に使われるエネルギー量は少なく、エネルギーロス率は約3%となっています。それに対して、たんぱく質と糖質が脂肪酸になり、中性脂肪に合成されるときには異なる形に変換されるため、エネルギーロス率は糖質で約20%、たんぱく質で約23%にもなります。同じエネルギー量の食品をとっても、体脂肪として蓄積されるときには20%前後のエネルギー量の差が生まれることになります。
夕食時には、自律神経の副交感神経が盛んに働き、副交感神経によって膵臓からインスリンが多く分泌されます。インスリンは昼間には糖質を筋肉細胞に取り込み、燃焼させるように作用しますが、夕方からはインスリンは糖質を脂肪に合成させると同時に、中性脂肪を脂肪細胞に多く取り込むように働きます。
これは夕食で摂ったものを、重要なエネルギー源の体脂肪として蓄えるために身体に備わった機能です。夕食では脂肪を減らした食事内容とし、脂肪は朝食と昼食で多めに摂ったほうが、体脂肪が余分に蓄積されるのを抑える効果が高いことになります。