発達栄養学121 野菜が食べられない子どもの対応5ミネラルの話

野菜を摂取する目的はビタミンとミネラルの摂取です。野菜は品種改良によって、おいしく、食べやすくなっていますが、その分だけビタミンもミネラルも以前に比べて減少しています。減少の割合は「日本食品成分表」で比較することができます。ほうれん草のビタミンCは100gあたりで1950年版には150mgであったのに今では平均が30mgとなっています。ミネラルではほうれん草の鉄を例としてあげていますが、1950年版では100gあたり13mgでしたが、今では2mgにも減少しています。
野菜から補給したいミネラルの代表的なものはカルシウム、カリウム、鉄です。カルシウムといえば骨や歯を丈夫にすることが知られていますが、出血時の血液凝固、神経伝達物質としての働きもあります。カリウムは体内の水分調整や浸透圧を調整する機能があり、ナトリウムを尿の中に排泄して、血圧を正常に保つ働きがあります。鉄は赤血球に多く含まれ、酸素を全身に運ぶために欠かせないものです。
野菜が完全に食べられないわけではなくて、少ない量なら食べられるという人であっても、ミネラルは以前に比べたら摂取量が少なくなっています。というのは、土壌の中に含まれるミネラルが植物の根から吸収されにくくなっているからです。土壌の栄養価を高めるために化学肥料が使われます。化学肥料には窒素、リン、カリウムが大量に含まれています。これによって野菜を早く、大きく育てることができるようになりました。
その一方で、化学肥料によって土壌菌の活性が低下して、土壌に含まれるミネラルがイオン化しにくくなりました。ミネラルはイオン化してから根から吸収されます。そのために、土壌にミネラルを多くしても、野菜に多くは含まれないという結果になりました。野菜が食べられない子どもは、野菜そのものの特徴的な味だけでなく、ミネラルに特有の苦味や渋味が食べにくくさせて、これが受けつけない原因にもなっています。
野菜が食べられないという場合には、飲みやすく調整された野菜ジュース、さらに飲みやすくするために果物を加えた野菜ジュースも活用します。野菜ジュースは野菜を凝縮しているとはいうものの、食物繊維は野菜に比べると少ない量でしかありません。食物繊維への対処法としては次回に紹介します。
野菜ジュースの中には濃縮還元されたものもあります。これは野菜の水分を減らす濃縮をしたものを、元に戻すときに水分を加えたものです。輸送の経費を減らすための方法ですが、減らされた水分はミネラルが含まれた水分で、加えられるのは水です。野菜そのものよりもミネラルが少ないので、できれば野菜そのままのジュースを選びたいものです。