発達栄養学16 代謝が進むほど活性酸素が発生する

細胞の中のミトコンドリアは酸素を使ってエネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)を産生していることから、ミトコンドリア内でエネルギーが作り出されるときに活性酸素が発生します。その量は取り込まれた酸素のうち2〜3%にもなります。活性酸素はプラスとマイナスの電子のバランスが崩れた酸素のことで、細胞の電子を奪うことで細胞を破壊したり、細胞内の遺伝子(DNA)を傷つけたりしていきます。
ミトコンドリア内のDNAは損傷されやすく、ミトコンドリア内で活性酸素が多く発生するとミトコンドリアの機能が低下していくようになります。機能が低下したミトコンドリアが多くなると、その細胞は必要なエネルギーが産生できなくなります。特にエネルギー代謝が盛んな骨格筋や神経細胞は影響を受けやすく、ミトコンドリアが劣化することによって細胞死のアポトーシスが起こるようになって、筋肉が減っていくようにもなります。高齢者では筋肉量が減り、身体が小さくなっていくのはミトコンドリアの劣化が一つの重要な原因と考えられています。
ミトコンドリアを増やすためには有酸素運動が必要で、その有酸素運動によって活性酸素が多く発生したのではマイナスになるように感じるかもしれません。しかし、有酸素運動によってブドウ糖や脂肪酸を効率よく燃焼させていると活性酸素の発生量を減らすことができます。活性酸素は不完全燃焼によって発生する老廃物のようなものと考えることができます。
ミトコンドリアの中のTCA回路の中でブドウ糖や脂肪酸を効率よく燃焼させていくには、ビタミンB群のビタミンB₁、ビタミンB₂、ビタミンB₆、ビタミンB₁₂が必要になりますが、それと同時に重要になるのは代謝促進成分のα‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10の量です。これらの代謝促進成分は20歳をピークに年齢とともに体内生産量が減少していくため、加齢によって活性酸素が増えていくことになります。
代謝促進成分は、どれもミトコンドリア内でATPの産生に関わっている物質で、ブドウ糖と脂肪酸はミトコンドリア内でATP生産に必要なアセチルCoAに変換されてからTCA回路に運ばれています。α‐リポ酸はブドウ糖をアセチルCoAに変換するために働くと同時に、TCA回路の回転を盛んにする働きがあります。
L‐カルニチンは脂肪酸と結びついてミトコンドリアの膜を通過させてアセチルCoAに変換させています。コエンザイムQ10はATP産生の最終工程の電子伝達系で補酵素として働いています。
このATP産生の反応で、コエンザイムQ10とα‐リポ酸は還元型の抗酸化物質に変換され、ATP産生の際に発生する活性酸素の除去物質(活性酸素を水に変える物質)としても働いています。
活性酸素を消去する成分としては、植物の色素などの抗酸化物質が知られています。ミトコンドリアで発生した活性酸素には種類があり、それぞれの抗酸化物質は消去を担うものが決まっているため、複数の抗酸化成分を摂る必要があります。ところが、代謝促進成分は体内で作られ、エネルギー産生のために働くだけでなく、活性酸素をミトコンドリア内で消去して外に漏れ出さないように働く物質でもあるため、ミトコンドリアを良質な状態で維持するために必要不可欠な物質となっています。