発達栄養学31 カルシウムが不足すると太るメカニズム

飲食から摂取するカルシウムが不足すると血液中のカルシウム濃度が低下することになるのですが、カルシウムが大きく不足すると逆に血液中のカルシウム濃度が上昇しすぎるというカルシウム・パラドックスが起こります。身体には重要なカルシウムの濃度を調整する機能があって、摂取するカルシウムが大きく減って、血液中のカルシウム濃度が低下すると、カルシウム濃度を一定に保つために、骨に蓄えられているカルシウムを分解して血液中に多くのカルシウムが一気に放出されます。その結果として、カルシウム濃度が一時的に高くなります。
カルシウム濃度を調整しているのは副甲状腺ホルモンです。副甲状腺ホルモンには脂肪細胞にカルシウムを取り込ませる働きもあり、副甲状腺ホルモンが多く分泌されるほど脂肪細胞の中に取り込まれるカルシウムが多くなっていきます。
脂肪細胞の中にカルシウムが多いことは正常な状態ではないために、余分なカルシウムを脂肪細胞の中から追い出すために、肝臓の中で脂肪酸合成酵素が多く作られるように働きかけられます。その結果として、肝臓で脂肪酸が多く作られ、これが中性脂肪となり、脂肪細胞の中に入る中性脂肪が増えていきます。
カルシウムの摂取量が足りていれば副甲状腺ホルモンが多く分泌されることもなく、脂肪酸合成酵素が増えることもなくて、脂肪細胞の中に中性脂肪が多く蓄積されることもなくなります。ここまで知ると、カルシウムを多く摂ると蓄積される中性脂肪が減ることを期待する人も出てくるものの、このメカニズムからするとカルシウムが不足したら太ることはあっても、多くのカルシウムを摂ったからといってやせるわけではありません。
ただし、カルシウムを多く摂ると、十二指腸から分泌される胆汁酸がカルシウムと反応して石鹸化が起こります。胆汁酸が多く分泌されるほど脂肪が多く分解されてエネルギーが作り出されていきますが、エネルギーにならなかった脂肪は肝臓で中性脂肪に合成されて脂肪細胞に蓄積されていきます。石鹸化した胆汁酸は、胆汁酸の働きをしなくなるので、その変化した分だけ脂肪が分解されなくなり、脂肪細胞に蓄積される中性脂肪が少なくなるということです。