発達栄養学7 代謝に影響する水溶性ビタミン

糖質、脂質、たんぱく質がエネルギー源として代謝に使われるときには、水溶性ビタミンが使われています。水溶性ビタミンは一つとして欠かすことができないので、その特徴と何を食べればよいのかを知っておくことが大切です。ビタミンB₁、ビタミンB₂、ビタミンB₆、ビタミンB₁₂については前にも紹介しましたが、改めて掲載しています。
ビタミンB₁はチアミンとも呼ばれています。糖質のエネルギー代謝に必要な補酵素としての働きがあり、疲労回復のビタミンとも呼ばれます。糖質からエネルギーを作り出す過程でできる乳酸は肝臓でブドウ糖に変換されてエネルギーとなりますが、ビタミンB₁が不足するとブドウ糖への転換が遅れ、乳酸が疲労物質として蓄積され、筋肉疲労や全身の倦怠などを引き起こすことになります。脳の唯一のエネルギー源でもあるブドウ糖を、エネルギーとして利用するときにビタミンB₁が必要で、不足すると脳の低血糖状態を引き起こし、中枢神経や末梢神経の働きが低下します。糖分や清涼飲料水を多く飲むと、急激な糖質代謝のためにビタミンB₁が不足しやすくなります。食品では、豚肉、ウナギ、カツオ、レバー、大豆、ニンニクなどに多く含まれます。
ビタミンB₂はリボフラビンとも呼ばれています。糖質、脂質、たんぱく質のエネルギー代謝の補酵素であり、特に脂質の分解・合成に深く関わっているため、不足すると血液中の中性脂肪や体脂肪の増加を引き起こします。成長の促進、細胞の再生などの作用があり、美容のビタミンとも呼ばれます。ビタミンB₂が欠乏すると口内炎、舌炎症、口唇炎、角膜炎などが起こります。脂質の摂取が多くなるとビタミンB₂の必要量が増え、体内で不足しやすくなります。食品では、ウナギ、サンマ、レバー、大豆、牛乳などに多く含まれます。
ナイアシンは水溶性のビタミンB群に分類されるニコチン酸とニコチン酸アミドの総称で、ビタミンB₃とも呼ばれます。体内では最も多いビタミンで、糖質、脂質、たんぱく質からエネルギーを産生する過程で補酵素として働きます。アルコールから発生する毒性の強いアセトアルデヒドを分解する際の補酵素としても働きます。食品では、カツオ、マグロ、たらこ、レバーなどに多く含まれます。
ビタミンB₆はピリドキシンとも呼ばれています。糖質、脂質、たんぱく質のエネルギー代謝の補酵素で、特にたんぱく質の分解・合成に深く関わっているため、不足すると貧血や肌荒れ、湿疹、神経系の異常などを引き起こします。腸内で腸内細菌によって合成されます。食品では魚や肉に多く含まれますが、調理したり、加工食品にすると失われやすくなっています。
葉酸はビタミンB₉とも呼ばれる水溶性ビタミンで、ビタミンB₁₂とともに新しい赤血球を正常に作り出すために必要であることから、造血のビタミンとも呼ばれます。タンパク質や細胞新生に必要な核酸を合成するために欠かせず、細胞増殖が盛んな胎児が正常に発育するために特に重要となることから、妊婦には特に摂取がすすめられます。葉酸には血液中のホモシステインを減少させる作用があります。ホモシステインは血管内皮を傷つけることで弾力性を失わせ、動脈硬化を促進させるため、葉酸を摂ることで動脈硬化の予防が期待されます。食品では、緑黄色野菜に多く含まれます。ビタミンB₁₂はコバラミンとも呼ばれています。脂質のエネルギー代謝の補酵素で、中枢神経や脳の機能を維持する作用があります。造血作用に関わり、葉酸とともに骨髄で正常な赤血球を作り出すのに欠かせません。腸内で腸内細菌によって合成されます。食品では、レバー、肉、魚介類などの動物性食品に多く含まれます。
ビオチンはビタミンHとも呼ばれる水溶性のビタミンB群です。糖質、脂質、たんぱく質のエネルギー代謝に関わる補酵素で、皮膚や粘膜の健康維持に関わっています。腸内細菌によって作られて吸収されるうえ、魚、肉、卵、豆類、野菜などに含まれるため不足することはありません。
パントテン酸はビタミンB₅とも呼ばれるビタミンB群で、補酵素のコエンザイムの構成成分であり、たんぱく質、脂質、糖質のエネルギー代謝の補助役として必須となります。皮膚や粘膜の健康維持に関わり、HDLコレステロール値の上昇、抗ストレス作用のある副腎皮質ホルモンや神経伝達物質の合成、免疫抗体の合成、解毒などの作用にも関与しています。食品では肝臓、肉類、魚介類に含まれますが、加熱や加工によって失われやすくなっています。
ビタミンCは皮膚や腱、軟骨などの結合組織を構成するコラーゲンの合成に欠かせず、皮膚や骨の健康維持、傷の修復に必要な水溶性ビタミンです。アスコルビン酸とも呼ばれます。腸管で鉄の吸収率を高め、抗ストレス作用がある副腎皮質ホルモンの合成を促進する作用があります。抗酸化作用によって過酸化脂質の合成の抑制、血管障害を予防する作用もあります。寒冷ストレスや喫煙などによって体内で減少します。食品では、野菜、果物に多く含まれます。