発達障害の改善と自転車との関連

自転車に乗れないという子どもが増えています。移動手段があまりなかった時代には自転車は重要なものでしたが、都市部に暮らしていて、他に移動手段(バス、電車、地下鉄など)があると特に不便を感じることはありません。大手おもちゃ販売店の調査(20〜59歳)では、自転車に乗れないのは1.4%で、乗れるようになった年齢の平均は5.7歳でした。これは大人を対象とした調査なので、乗れるのがほとんどという結果です。
これに対して入学する年齢の満6歳までに乗れるようになったのは75.1%となっています。6歳までに乗れないと一生涯乗れなくなる人が多いと言われていますが、家庭の自転車保有率は約80%なので、だいたい当たっているように思われます。6歳までに乗れないと、ずっと乗れなくなるわけではないものの、子どものときにバランス感覚を身につけておかないと、それが脳全体の発育に関係してくることが明らかにされつつあります。
脳の運動神経を司っている脳幹では脳の発達が初めに起こり、それに続いて大脳辺縁系、大脳新皮質が発達していきます。脳の中心の脳幹はバランス感覚を取るように刺激されると、大脳の奥にある大脳辺縁系が刺激されます。大脳辺縁系は感情や意欲、生命維持に必要な働きをしています。大脳新皮質は思考や記憶を担っている部分で、脳幹が刺激され、大脳辺縁系が刺激されることで、学習に必要な思考や記憶の能力が高まっていきます。
発達障害は、脳の発達の一部に遅れがあり、その能力に凹凸があるものと理解されています。そのために年齢を重ねていくと徐々に凹の部分が補われていくものと考えられています。それは実際にあることですが、自転車に乗る機会がまったくなかった子どもに、急に乗るように指示をしても、まず乗るのは難しく、奇跡的に乗れたとしても乗り慣れている子どもと同じようにスムーズに漕いで進むことはできません。
訓練をしないで、運動機能が高められて、乗れるようにはならないのと同じように、脳幹が充分に刺激されていないかった子どもに、年齢が進んだからといって通常の学習の機能を求めても難しいということです。
発達障害への運動機能トレーニングは、入学前に実施しないと改善しにくくなっています。脳幹を刺激する運動は、自転車に限らず、さまざまなことに挑戦する能力、そして学習能力の向上のために欠かせないことなのです。だから、結果として自転車に乗れなかったとしても、自転車に乗ろうとする行動は改善のためには必要なことといえます。