糖尿病は太った人がなるのか

やせている人が長生きなのか、太っている人が長生きなのかという議論があります。高齢になると免疫が低下していくので、太っている人のほうが抵抗力は強くて長生きだという考えがあります。太っているといっても程度問題で、どれくらいがよいのかという論文は探しても出てこないのですが、標準体重よりも5%ほどプラスの体重がちょうどよいと考えられています。身長が160cmの人の標準体重は「1.6×1.6×22=56.32」で、約56.32kgが標準体重になります。これの5%増しは約59kgです。ここまでの体重なら健康面では問題がないという計算になります。
病院で入院患者を見ていると、高齢になるほど太っている人が少なくなる傾向があることから、「太っているほうが病人は少なくて長生き」という論拠として使われることがあります。しかし、高齢になると太っている人のほうが早く亡くなる傾向があるので、太っている人が少なくなっているだけ、という考えもあります。
糖尿病の人の場合は年齢と太っていることに関係があるかということですが、太っている人は内臓脂肪が多く、内臓脂肪から血液中のブドウ糖の取り込みを低下させる生理活性物質が多く分泌されてインスリン抵抗性を高めることが知られています。インスリン抵抗性というのは、ブドウ糖を細胞の中に取り込むために必要なインスリンが分泌されていても、インスリンの効きが悪い状態になっていて、血糖値が下がりにくい状態をいいます。そのために太っている人のほうが糖尿病になりやすいのは確かです。
しかし、糖尿病が悪化すると、ブドウ糖を細胞に取り込む能力が低下しているために、全身の細胞が栄養不足の状態になっていて、細胞レベルからやせていって、だんだんと全身がやせていくようになります。そのために「糖尿病は細胞が饑餓状態になる病気」と言っている専門家もいます。
糖尿病になるとやせていく理由として、もう一つ言われているのが、筋肉を作るためのエネルギーの不足です。細胞に取り込まれるブドウ糖が少なくなると、細胞の中にあるエネルギーを作り出す器官のミトコンドリアに取り込まれるブドウ糖が減っていきます。少ない量であっても、これを効果的に燃焼させるようにすればよいわけですが、ミトコンドリアにブドウ糖を取り込むためにはα‐リポ酸が必要になります。これは体内で合成される成分なので若いときにはサプリメントとして摂る必要はなくても、α‐リポ酸は20歳代をピークに合成量が減っていき、体内の蓄積量も減っていきます。年齢を重ねると大きく減っていて、ブドウ糖をエネルギーとする力が下がっていきます。そのために補給が重要となっていきます。
ミトコンドリアの中でエネルギーを作り出すためには、エネルギー産生のエンジンに当たるTCA回路で燃焼を進める補酵素の役割をするコエンザイムQ10が必要になります。糖尿病を予防するため、改善するためには、これらの成分が必要となるので、不安を感じている人はサプリメントとして摂ることも考えたいものです。
α‐リポ酸とコエンザイムQ10については、このサイトの「サプリメント事典」を参照してください。