細胞を活性酸素による破壊から守る抗酸化成分

活性酸素には欠けたマイナス電子を取りやすいものから順番に奪って補っていくという性質があります。身体の細胞よりもマイナス電子が奪われやすいものが近くにあれば、そこから先にマイナス電子を奪っていくために、体内の細胞は活性酸素からマイナス電子を奪われないようになり、破壊から守られることになります。活性酸素にマイナス電子を奪われやすいのが抗酸化成分と呼ばれるもので、その代表的なものが植物などに含まれている色素成分です。
紫外線は活性酸素を多量に発生させますが、紫外線を浴びることで光合成を行って成長する植物が、紫外線を浴びて活性酸素が多く発生して細胞が破壊されていたのでは成長することも、生き延びることもできなくなります。そこで紫外線による活性酸素の発生に対応するために、抗酸化成分を色素の形で作り出して、内部に溜め込んでいます。植物の色素は紫外線が強いほど多くなり、色が濃くなる傾向があります。太陽光が強い赤道に近い地域ほど植物の色は濃くなっています。色鮮やかな野菜を見ると、その原産地は赤道近くの地域が多く、トマトやトウガラシ、ナスはペルー、レモンはインド、メロンはエジプトが原産地となっています。
ワインやココアなどに含まれるポリフェノールに抗酸化作用があることは広く知られていますが、ポリフェノールは植物に含まれる褐色の色素で、この抗酸化成分も日差しが強いところで育ったものには多く含まれています。沖縄の海で獲れる魚は熱帯魚のように色鮮やかなことが知られていますが、これも紫外線に対抗するための色素を多く作り出し、内部に多く溜め込んでいる結果です。同じ海域であっても、紫外線が届く浅瀬に棲息する魚は熱帯魚のように色鮮やかで、紫外線が届きにくい深いところに棲息する魚ほど色は薄くなっています。これも紫外線の強さが魚の色素に影響している一つの証拠としてあげられます。
抗酸化成分が身体の中で酸化しやすい性質は、健康維持にとっては大きなプラスになります。しかし、身体に入る前の段階で酸化が進んだのでは、抗酸化成分というよりも酸化した活性酸素を摂っているのと同じようなことになりかねません。
その例として取り上げられることが多いのは、緑茶の色素成分のカテキンです。カテキンは抗酸化作用が非常に強く、茶葉はお湯で淹れたときから急速に酸化が始まります。抗酸化作用が強いほど酸化しやすいので、時間がたってから再び淹れたお茶のカテキンは酸化が進んでいます。緑茶は手軽に抗酸化成分を摂れるものですが、茶葉は酸化しやすいことを知って、頻繁に茶葉を交換すべきです。