自閉症スペクトラム障害児は3%以上

発達障害児の発現率は文部科学省の調査では6.5%ですが、多くの現場での調査では10%に達しているとみられています。自閉症スペクトラム障害、注意欠如・多動性障害、学習障害の三大発達障害でも、どれくらいの割合なのかは実は明らかにされていませんでした。国内だけでなく、国際的にも自閉症スペクトラム障害の有病率は増加傾向にあるのか、変化がないのかの結論も出されていないのが現状です。
弘前大学は、自閉症スペクトラム障害について2013年から地域の全5歳児の発達健診を行い、疫学調査を行ってきました。2016年までに調査を行ったのは5016人で、3954人の保護者、教師、保育者がスクリーニングに回答して、そのうちスクリーニング陽性だった子と、スクリーニング陰性のうち保護者が検査を希望した子を合わせた559人が発達検査を受けて、87人が自閉症スペクトラム障害と診断されました。スクリーニングと発達検査に非参加だった子を統計学的に調整して、自閉症スペクトラム障害の有病率の推定が算出されました。
解析の結果、自閉症スペクトラム障害の粗有病率は1.73%、男女の比率は2.22:1でした。非参加の子を統計学的に調整した後の自閉症スペクトラム障害の有病率は3.22%で、男女の比率は1.83:1と推定されました。3.22%の有病率の推定は、これまで報告されている2011年の韓国の研究報告の2.64%より高くなっていましたが、これはスクリーニング法が精度の高いものであった結果であると考えられています。
また、自閉症スペクトラム障害の88.5%は少なくとも一つの発達障害の併存があり、50.6%に注意欠如・多動性障害、63.2%に発達性協調運動障害、36.8%に知的発達障害、20.7%に境界知能は併存していることがわかりました。
自閉症スペクトラム障害と診断された87人のうち、以前に自閉症スペクトラム障害と診断されていたのは21人(24%)で、66人は未診断でした。5歳までに支援を受けていた59人のうち38人は別の診断(発達や言葉の遅れ)で、28人(32%)は5歳までに発達の問題を指摘されていないという結果でした。