もっとある「大」がついた“異音意義”

「大分」と書かれていたら、一般的には“だいぶ”と読むところでしょうが、九州の人なら“おおいた”と読むかもしれません。大分は言わずと知れた九州地方東部の県名です。“だいぶ”のほうは、かなりの程度という意味です。今さら書く必要もないでしょうが。
「大手」は“おおて”と読むと城の表門、敵の正面に攻めかかる軍勢、大手筋の略で、将棋の大手も、これです。ところが、“おおで”と読むと肩から手先までを示して、遠慮をしないで動くことを大手を振るというのも、この使い方です。
「大門」の使い分けは、東京では芝大門と吉原大門が例としてあげられます。芝は大門(だいもん)で、芝大門という地名にもなっていますが、そこにあったのは増上寺の大きな総門です。これ以外では“だいもん”と読めば、大きな門、外構えの大きな門、大きな家柄、大家となります。吉原は大門(おおもん)で、吉原遊郭(正式には新吉原)の入口にあった大きな門です。これ以外では“おおもん”と読めば、大きな門、邸宅・城郭などの第一の表門、正門を指します。
「大家」は“おおや”と読めば、おもや、本家、貸家の持主、家主の意味になり、“たいか”と読めば、大きな家、大屋、富んだ家、貴い家柄、その道に特にすぐれた人となります。
苗字に使われる漢字は、苗字と地名ではひらがなでは同じでも、アクセントが違っています。渋谷は地名は平坦に読み、苗字は先頭にアクセントがつくのが原則です。ただ、地名と苗字で同じアクセントのものもあります。「大木」は苗字も地名も“おおき”ですが、“たいぼく”と読むと大きな立木、大樹を意味します。
「大仏」は“おさらぎ”で苗字となりますが、“だいぶつ”と読むと大きな仏像となります。
「大山」は“おおやま”で苗字となり、神奈川県中部の山も同じ読み方です。他に大きな山、大がかりな、山師のもくろみとなります。“だいせん”と読むと鳥取県西部にある複式火山のことです。