フレイルとサルコペニアの関わり

加齢によって筋肉量・筋力が減少して基礎代謝量が低下すると、1日に必要な消費エネルギー量が減ることによって食欲が低下します。その結果、食事の摂取量が減少して、低栄養となります。加齢や疾患によって筋肉量が減少することで、全身の筋力低下や身体機能の低下が起こることはサルコペニアと呼ばれます。サルコペニアはギリシャ語で筋肉を表す「sarco」と喪失を表す「penia」を合わせた造語です。
サルコペニアになると筋力の低下から易疲労性や活力の低下を引き起こし、身体の機能低下が進んでいきます。これに認知機能の低下や精神的な面の低下も加わると、活動量が低下して、日常生活に支障をきたし、社会的な側面も障害されるようになります。機能低下が進んで日常生活に介護が必要な状態になると、ますます消費エネルギー量は低下して、食事量が低下して低栄養になっていくという悪循環を繰り返しながら、フレイルは進行していくことになります。
中高年の場合には過栄養、肥満からメタボリックシンドロームになり、高血圧症、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を引き起こし、死亡リスクが高まることから生活習慣病の予防が大切になります。これに対して、高齢者ではフレイルの原因となる身体機能や認知機能の低下に関連する低栄養への対策が重要となってくるのです。このことは厚生労働省も重視しており、広範囲の生活習慣病の予防よりも現在の生活習慣病の重症化の予防と、フレイルの進行の予防が重要視されています。
フレイルの進行については、フレイルサイクルによる悪循環が指摘されています。フレイルサイクルのサルコペニアは、筋肉量が低下し、歩行速度が低下しているような状態を指しています。サルコペニアには、加齢によるサルコペニアと病気に伴って起こるサルコペニアがあります。フレイルサイクルでは、加齢や病気で筋肉量が低下して、サルコペニアを起こして身体機能が低下することを出発点としています。足の筋肉量の低下により歩行速度が落ちたり、疲れやすくなることから全体の活動量が低下します。全体の活動量が低下すると消費エネルギー量が減り、身体を動かすために必要となるエネルギー量も減少します。動かないことによって空腹を感じにくくなって食欲もなくなります。
加齢による食事量の低下に加えて、食欲低下も起こると慢性的に栄養不足の状態になります。慢性的な低栄養の状態は、筋肉を維持するためのたんぱく質などの栄養素が減ることになり、さらにサルコペニアを進行させ、筋力低下が進むという悪循環に陥ります。このようなフレイルサイクルの悪循環によって要介護の状態に近づいていくこととなります。