フレイルと未病の関連性

日本老年医学会は高齢になって筋力や活力が衰えた段階をフレイルと名付けて、予防に取り組むべきだと2015年に提言しています。これを厚生労働省も採用しています。フレイルは虚弱を意味する海外の老年医学の分野で使用されている「frailty」から来ている言葉ですが、日本老年医学会では高齢者で起こりやすく、改善しにくいという認識を見直して、正しい介入によって戻すことができるということを強調するため、フレイルという呼び名が提案されました。
また、日本老年医学会は、フレイルを健康と病気の中間的な段階であるとしています。75歳以上の高齢者の多くは、フレイルを経て要介護に陥り、全身の機能が低下して生活習慣病が発症しやすく、重症化しやすくなるとされています。健康寿命と平均寿命の差は男性で約9年、女性で約12年となっていますが、男性の場合、平均寿命は約81歳であることから73歳のときから自由に活動できなくなることが考えられます。そうならないための対策は、70歳になってからでは手遅れになりかねず、65歳に達した段階で始める必要があると考えられています。
フレイルは健康と病気の間ということでは、日本未病システム学会が定義する未病と同様に考えることができます。同学会では検査数値が高まった状態で、高血圧症、糖尿病、脂質異常症などの病名がつけられたとしても、病気への進展を抑え、健康に戻れる段階は病気ではなく未病としています。医療や健康対策の介入とともに自らの行動変容によって健康状態に戻すことができる状態です。未病状態であっても健康で、元気に暮らしていけることは“未病息災”と表現されています。
フレイルは、身体の衰えを自覚した段階から対策を始めることで、検査数値の異常も防ごうとするもので、未病の前の段階といえます。高齢者の中には、生活習慣病の検査数値に異常がないままに身体機能低下によって疾患と同じように全身の機能が低下していく人もいます。これまでは「健常→要支援→要介護」と進んでいくことを中心と考えられていましたが、フレイルは要支援・要介護の危険性が高い状態であり、身体機能低下は要支援・要介護状態と位置づけており、これを「健常→フレイル→身体機能低下」として、身体機能低下が起こる前に対策を講じることが求められます。
健康寿命は自由に活動できる期間を指していますが、フレイルは身体機能の低下が始まった段階であっても行動は制限されていないため、フレイルまでが健康寿命とされています。フレイルは生活習慣病の初期段階であるとともに、老年症候群と呼ばれる認知機能紹介、視力障害、難聴、めまい、摂食障害などが起こるようになっているだけに、回復困難な身体機能低下となる前の、これらの症状がみられた軽度の段階で対応するべきです。
今回から、しばらくはフレイルについて紹介していきます。