リンを減らせば長生きできるのか

NHKの特集番組「人体」で腎臓がテーマの回があり、腎臓が濾過するリンが多くなると老化が進むことが紹介されてから、「リンを減らす方法を教えて」というリクエストが増えてきました。リンは骨や歯を構成するミネラルで、体内にあるリンの80%ほどはカルシウムやマグネシウムと結びついたリン酸カルシウムやリン酸マグネシウムとなっています。他に核酸やエネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)、細胞膜などの構成成分となっています。
リンは加工食品や清涼飲料水などにリン酸塩の形で多く含まれているので、できるだけ加工していない食品を食べるとよいというのは以前からよく言われてきました。リンは血液中でカルシウムと結びつくとリン酸カルシウムとなり、血液中では必要のないものとなって排泄されます。“必要がない”という表現は詳しく言うと間違いで、骨の中のリン酸カルシウムは絶対に必要です。
血液中では必要がない状態になって、という表現のほうが合っているかと思いますが、リンが多くなりすぎると血管の細胞にリンが吸収されて動脈硬化の原因となることが知られています。
血液中にリンが多くなったときには、腎臓が必要なリンを血液中に戻し、多くなった分は濾過した後に尿とともに排泄されることによって調節されています。その調節が乱れるとリンが多くなりすぎて動脈硬化を引き起こすことになるのです。
腎臓の調節を乱す原因として特に注目されているのは医薬品によるダメージです。腎臓は150gほどと握りこぶし大で、左右に一つずつあります。小さな器官なのに心臓から送り出された血液の20%ほどが流れ込んでいます。血液中に入った医薬品は肝臓で一部が分解され、残ったものが全身を巡り、役目を終えた後に腎臓によって排泄されます。医薬品の量が増えると腎臓のダメージが強くなり、リンの排泄量が少なくなってきます。腎臓も血管でできているので、リンが多すぎる状態では腎臓も傷めていくことになります。
リンが増えすぎないようにして腎臓を守るためには、リンが多い加工食品などを減らすことのほかに、カルシウムを多く摂ることがすすめられます。カルシウムの摂取が多ければ、骨の中のリンも増えていきます。こうなると、腎臓はリンを多く再吸収させる必要がなくなって、余分なリンは排泄されるようになります。この結果、血管の老化が防がれ、全身の老化を抑えることができるようになるというわけです。