肝臓が悪い人は“肝臓を食べろ”は本当か

肝機能が低下して解毒・分解などの能力が低下している人は「ウコンを飲めばいい」というのは、半分本当で半分間違いという考えがあります。ウコンは肝臓でのアルコールの分解を進める作用があるので、飲酒する人には有効であっても、アルコール飲料を飲めない人はウコンが肝臓内に残り、これが肝臓に負担をかけます。ウコンは漢方薬の原料の鬱金で、薬を分解するのに肝臓に負担がかかるので、かえってよくないというわけです。
健康食品を使って肝障害を起こすという健康被害があった人で、一番多いのがウコンによるものです。“クスリ”のつもりが“リスク”になっては仕方がないということで、肝臓のもとになるものを食べようと発想する人がいます。
肝臓は手術によって半分を取り除いても2か月で元の大きさになるという再生能力がある臓器です。それもあってか、肝臓をよくするためには動物の肝臓であるレバーを食べればよいという考えが広まっています。なんだか臓器移植のような感覚ですが、「レバーは人間の肝臓と似ているので肝臓を食べれば肝臓が再生される」というわけにはいきません。
肝臓はたんぱく質で構成されています。食品で摂ったたんぱく質は胃で分解されてアミノ酸になります。腸から吸収されたアミノ酸は血管を通って肝臓に運ばれ、ここで身体に必要なたんぱく質が合成されます。このことからわかるのは、肝臓を食べても肝臓の一部分になるとは限らないというのが一つです。もう一つは、たんぱく質を合成する肝臓の機能が低下していたら、充分に肝臓を補うだけのたんぱく質が作られなくなるということです。
私たちの肝臓に負担をかけているものとして、農薬、食品添加物、薬剤、化学物質などがありますが、食品として食べている肝臓に、これらのものが残留していたら、それも一緒に食べてしまうことになり、肝臓に強い負担をかけることになります。動物が有害物質を体内に取り込んでいたら、それを分解する肝臓に運ばれます。多くの有害物質が残留した状態のレバーを食べたら、「肝臓を食べたら肝臓によい」どころか「肝臓を食べたら肝臓に悪い」ということになってしまいます。
他の臓器は、それほどのことはないかもしれませんが、有害物質を分解する肝臓だけは他と分けて考えなければならないということです。では、肝臓のためには何を食べればよいのかということですが、食事療法でみてみると適正なエネルギー量にして、脂肪を控えることです。以前は充分な栄養を与えることがすすめられていましたが、栄養の摂りすぎは肝臓に負担をかけることから適度な量で抑えるようになっています。肝臓の再生には充分なビタミン、ミネラルが必要になるので、おかずの種類を増やすことが求められます。