三大ヒトケミカルの特徴を知っておこう

全身には60兆個以上の細胞があります。その細胞の中にはミトコンドリアという小器官があって、ブドウ糖や脂肪酸を材料として酸素を用いて燃焼させ、エネルギーを作り出しています。このエネルギーが生命維持や全身の器官の活動に使われています。つまりは“生命エネルギー”です。
ミトコンドリアでの燃焼のためには代謝に必要となる栄養素であるビタミンB群(ビタミンB₁、ビタミンB₂、ビタミンB₆、ビタミンB₁₂)の他に、三大ヒトケミカル(α‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10)が必要となります。ビタミンB群は食品に多く含まれているので、通常の食事で摂ることができます。
三大ヒトケミカルは、以前は医薬品としてしか使えないものでした。2001年にコエンザイムQ10が、2002年にL‐カルニチンが、2004年にα‐リポ酸が食品としての使用も許可されて、サプリメントの素材として使われるようになりました。エネルギー代謝を促進するということで、ダイエット素材として使われて人気が出ました。また、コエンザイムQ10とα‐リポ酸は抗酸化成分としても知られました。
一般的な抗酸化成分は、活性酸素によって破壊されることで、細胞が破壊されることを防いでいます。それに対して、コエンザイムQ10とα‐リポ酸はミトコンドリアでのエネルギー代謝を盛んにすることによって不完全燃焼がなくなり、活性酸素の発生量が少なくなります。仕組みはまったく違っているのに、結果が同じということで同じ扱いをされました。こういったことがあって、代謝によって生命維持のエネルギーが作り出されるという重要なことが見逃されることになりました。その状態は今も続いています。
三大ヒトケミカルは、どれも体内で合成されているものの20歳代をピークに減少していく成分で、日本人は歴史的に長生きしたことがないこともあって高齢者になると特に大きく減少していきます。また、三大ヒトケミカルの成分は医薬品として使われてきたことからエビデンス(科学的な裏付け)が確認されています。健康食品は、同じ機能があるものが複数ありますが、三大ヒトケミカルは他に同じ機能をするものがありません。
三大ヒトケミカルのα‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10は食品にも含まれています。α‐リポ酸は酵母、動物の肝臓・腎臓、ホウレン草、ニンジン、トマトに多く含まれています。L‐カルニチンは肉類に多く含まれ、中でも羊肉の含有量が多くなっています。コエンザイムQ10は鰯、鯖、牛肉、ピーナッツ、ブロッコリーなどに多く含まれています。食品に含まれているものの、含有量は非常に少なく、体内で合成されることから吸収率は非常に低くなっています。医薬品では吸収率が高められ、サプリメントとしての三大ヒトケミカルも吸収できる形となっています。
α‐リポ酸は、ブドウ糖をエネルギー燃焼に適した形のアセチルCoAに変換させるとともに、エネルギーを作り出す細胞のミトコンドリア内のTCA回路内での補酵素として働き、エネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)の産生に不可欠な成分となっています。
L‐カルニチンは、脂肪酸と結びついてミトコンドリアの膜を通過する働きがあり、脂肪酸はミトコンドリア内でエネルギーを作り出すのに必要なアセチルCoAに変換されてTCA回路に送られていきます。
コエンザイムQ10は、エネルギーを生産するために欠かせない脂溶性のビタミン様物質で、ミトコンドリアの中でATPを合成する酵素の作用を助ける補酵素となっています。
この働きが組み合わされることによって、エネルギーが効果的に作り出されているわけです。