代謝はエネルギー産生を高めることか

日本人は体質的に弱点があり、それを解消することが健康づくりには重要であるということは以前から述べられてきたことです。体質については、このWEBサイトの「日本人の体質」で説明しています。体質というのは、ある意味では便利な言葉で、医学的によくわからないことであっても「体質のせい」という言葉で済まされることがあります。しかし、細胞レベルでの代謝の研究を進めていくと、体質の違いは代謝の差が大きく関係していることがわかり、体質の弱点は代謝の促進によって克服できることがわかってきました。
代謝はエネルギー代謝と物質代謝に分けることができます。エネルギー代謝は細胞の中でエネルギーを作り、貯蔵し、利用するエネルギーの流れのことを指しています。一方で、物質代謝は全身の細胞を再生することのほかに、細胞から分泌される成分を作り出すことも指しています。
エネルギー代謝は細胞の中のミトコンドリアというエネルギー産生器官で起こっていることで、その材料(エネルギー源)になっているのは糖質、脂質、たんぱく質の三大エネルギー源です。エネルギー代謝によって作り出されたエネルギー量のうち約70%は生命維持のための基礎代謝に使われ、約20%が体を動かす活動代謝に使われています。そして、残りの約10%は食事誘発性体熱産生という食事をした後に体温を上昇させるために使われています。基礎代謝の約70%は生命維持のための体温を高めるために使われているため、全体のエネルギー量のうち約半分(70%×70%=約50%)は体温維持に使われていることになります。
そのため、全身の細胞で発生するエネルギーが不足すると細胞の中で発生する温度が低下することになります。日本人は他の民族に比べて血液温度が低い特徴があるのですが、これはエネルギー産生が少ないことに関係しています。血液の温度が低くなると、血液中で動物性の脂肪である飽和脂肪酸が固まりやすくなります。畜産肉となる牛、豚、羊、鶏などは血液温度が高く、その中で飽和脂肪酸は溶けていますが、血液温度が低い日本人の血液の中に入ると固まりやすくなります。それに対して、肉食文化が長かった欧米人やアジアでも北方で暮らす民族は脂肪をエネルギーとする能力が高く、そのエネルギーが血液の温度を高めているために飽和脂肪酸を多く摂っても日本人よりも固まりにくいという特徴があります。
血管の老化を進める原因として、血液中の中性脂肪の増加があげられています。中性脂肪をエネルギーとする能力が高ければ血液中の中性脂肪は減ることになります。そして、血液中で中性脂肪が固まらずにスムーズに流れていれば、血管の老化が進む動脈硬化のリスクも低下させることができるようになります。血管の細胞で作り出されたエネルギーは細胞の中で使われ、細胞の再生が進みやすくなっています。これも日本人の血管の老化が進みやすいという弱点につながっているのです。