健康寿命延伸のための提言17 提言のエビデンス1喫煙・受動喫煙3

国立高度専門医療研究センター6機関(国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センター)が連携して、研究成果として「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」を公開しています。提言のエビデンスの解説(第3回)を紹介します。
タバコを吸うことは本人の身体だけでなく、間接的に煙を吸い込む受動喫煙でも起こりますが、女性の場合には妊娠中の胎児に悪影響が出るという特殊な事情があります。日本人を対象にした研究では、喫煙によって妊娠高血圧症候群などの妊娠合併症が増加して、妊娠中の喫煙によって子どもの出生児体重が低下して、早産が増加することが報告されています。また、海外の研究では、喫煙によって流産、前置胎盤、胎盤早期剥離のリスクも増加するとの報告があります。
その一方で、妊娠早期の禁煙によって出生体重や早産のリスクが低減することが報告されています。喫煙習慣がある女性は、必ずしも胎児に影響が出るというわけではなくて、妊娠が判明した段階で禁煙することによってリスクを回避できるということです。そのため、妊婦にも一般の成人と同様に禁煙を指導することが推奨されています。
禁煙については禁煙外来が医療機関に設けられるようになってきていて、ニコチン置換療法によって長年の喫煙習慣がある人でも禁煙が可能になっています。医薬品を用いるだけでなくて、行動療法によって禁煙する例もありますが、本人がよほどの覚悟を持って望むようなこと、妊娠、子どもの誕生などの機会がないと難しいようです。
未成年の喫煙者は禁煙指導を実施しても参加率が低く、また禁煙に取り組んだとしても継続率が低いという問題があります。途中でやめることよりも、禁煙を成功させる一番の手段はなんといっても喫煙しないことです。そのためにも喫煙の害を正しく周知させることが重要となります。