同じ漢字なのに“おお”か“だい”かで意味が違う

「大」と書いて、“おお”と読むのか“だい”と読むのかは、その後に続く言葉によるということを紹介していて、すぐに別の例を出すのもどうかと思うのですが、そんな大人気(おとなげ)ないことを書かせてもらいます。まずは「大人」ですが、“おとな”と読むと成長した人になり、“だいじん”と読むと徳の高い人、“だいにん”と読むと中学生以上の成人となります。料金の表示に大人と書かれていたら、これは“おとな”ではなく“だいにん”です。
「大字」は“おおあざ”は町村内の区画で、“だいじ”は大きな文字です。「大文字」と書かれていたら、大きな文字ということで“おおもじ”と読む場合と、“だいもんじ”と読む場合があります。京都の大文字焼きの大文字です。
女性の戒名につけられている「大姉」は“だいし”と読みます。これを“おおあね”と読んでしまうと長女のことになります。別に長女でなくても戒名には大姉が使われます。男性の戒名のほうは「大兄」ではなくて、居士(こじ)が使われます。「大兄」を“だいけい”と読むと男性同士で同輩や年上の敬称となり、“おおあに”と読むと長男の意味になります。
敬称として使われている言葉には「大身」もあります。敬称では“たいしん”と読みます。残念ながら“だい”ではありません。身分の高い人、位が高くて家の富んだ人、高位・高禄の人などの意味になります。“おおみ”と読むと刃渡りの長大な刃物、特に日本刀を表す言葉として使われます。
これくらいの説明で、大方はわかってもらえたかと思います。この「大方」は“おおかた”と読んで、物事のほぼ全体、大体、大部分、あらまし、世間一般、おそらく、多分といった意味で使われます。この別の読み方というと思い浮かばない人も少なくないかと思いますが、“たいほう”という読み方があります。これは度量の大きいことを表す言葉で、仏教の世界では仏道(仏の道)、学問・見識の高い人を示します。