品種改良によってマイナスになったこと

品種改良によって栄養価が変わった農産物はホウレン草の他にもあり、トマトは以前にはトマト臭いと表現されるほど味に特徴がある赤系の品種でしたが、色づきが途中の半分が赤く、半分が緑色のトマトも店頭に並んでいました。これはトマトが傷みやすいことから固いうちに収穫して販売していたためですが、後に登場したピンク系の桃太郎は早く収穫しても全体が色づき、甘いことから人気になりました。しかし、ビタミンとミネラルが少なく、桃太郎では酸味が少なくてトマトソースが作りにくくなっています。また、抗酸化成分も品種改良によって減ったことから、栄養価の高い赤系のプチトマトやミニトマトが登場してきています。
かつての大根の品種は練馬大根や三浦大根といった中央が膨らんだものでしたが、今では真っ直ぐな青首大根が主流となっています。抜きやすく、運びやすく、均等な長さと太さであることから人気が高まりました。しかし、その反面、ビタミン類の含有量が減り、辛味も減りました。また、消化酵素のジアスターゼ(アミラーゼ)含有量も減っています。
品種改良だけでなく、栽培する土の状態も栄養価に影響を与えています。昔は肥料に動物などの糞や藁を使った有機肥料だったのが、今では窒素、リン酸、カリウムなどの化学肥料が多く使われています。非常に効率のよい肥料ではあるものの、土壌の性質が代わり、土壌微生物が減少し、ミネラルが有機酸塩(フラボ酸)などのイオンで取り込みにくい状態となっています。植物の根は有機酸で吸収しやすいイオンの形でミネラルを取り込んでいるため、植物に吸収されるミネラル量が減少しているのです。
ミネラルは体内の酵素反応に欠かせない補酵素であり、有害物質を分解するために酵素が使われるときにはミネラルも多く使われています。これは人間の身体に限ったことではなく、植物も有害物質が多くなると、その分解にミネラルが使われることからミネラル量も減少することになります。このような実態から、多くの栄養素を摂ることの重要性を知ってもらいたいのです。