天候不順の時代のウォーキングは危険回避が重要だ

ウォーキングは安全なスポーツだと言われています。他のスポーツと比較して怪我や事故を起こすリスクは少なく、「これまでにウォーキングイベントで死者が出た例はない」と言い切っている関係者もいます。ウォーキングを学問として研究する学術団体もあり、安全のための研究も盛んにされています。ウォーキングイベントは集団で歩くことから“周囲の目”もあって危険を察知しやすいこと、多くの人で歩くと身体に負担をかける無理な早歩きは防げるということが安全の理由としてあげられます。そういうこともあってウォーキングイベントの当日に亡くなる例はなくても、その日の夜に体調を崩して、翌日に亡くなる例が絶対にないということはありません。これは交通事故死と同じ発想で、翌日に亡くなったのはカウントされないのです。
ウォーキングイベントの開催日は、過去の天候や環境、参加者の実績を加味して決められています。中には長年、同じ日に開催してきているので覚えやすく、馴染みがあるからという理由で開催日を変えないことがありますが、十年一昔と言われるように時代は変化しています。5月といえば暖房の冷房もいらない過ごしやすい季節であったはずなのに、今では5月に気温が25℃超えの夏日、30℃超えの真夏日どころか35℃超えの猛暑日になる、それも西日本だけでなく東日本でも、という時代になっています。そのときの状況によって歩き方を変える、コースや距離を変える、場合によってはイベントを中止しなければならない時代にもなっているのです。
自治体ではウォーキングの担当を健康福祉や社会教育ではなく、危機管理の部署が担当しているところがあります。災害などで通常の交通機関や地域の足である自動車が使えない道路状況になったときに安全なところに避難するためには歩くことが必要です。歩いて逃げることができるだけの体力保持、たとえ長距離でも早歩きでもできるような体調管理は重要です。それを身につけておくことこそが地域の危機管理の基本の一つという考えがあるからです。その危機管理のためのウォーキングで体調を崩す、足腰を傷めて歩けなくなる、それが寿命を短くするということはあってはならないことです。
危機管理はウォーキングを企画する者、指導する者が絶対に持っていなければならない意識と素質であるはずなのですが、昨今の健康ブームに安易に乗って、危機管理なしで歩かせよう、運動をさせて健康につなげようという人がいて、これが危険につながっていることがあるのも事実です。