天然型のα‐リポ酸が認知機能を高める

α‐リポ酸が脳細胞の働きを高めることを前回、紹介したところ、天然型と非天然型の違いについても紹介してほしいというリクエストがありました。一般にはα‐リポ酸というと天然型のR‐αリポ酸を指しています。わざわざ天然型のR‐αリポ酸と言わなければならないのは、非天然型のS‐αリポ酸が使われたサプリメントが出回っているからです。出回っているというよりも、多くのα‐リポ酸サプリメントにはS‐αリポ酸が使われていて、R‐αリポ酸だけのサプリメントは、ごく少数派です。
体内で代謝促進成分として使われて、細胞のミトコンドリアにブドウ糖を取り込む作用があるのはR‐αリポ酸だけです。それなのにS‐αリポ酸が使われているのは、R‐αリポ酸は胃液によって分解されて代謝成分とはならないからです。R‐αリポ酸とS‐αリポ酸を等量(50%ずつの同量)で組み合わせたラセミ体とすると胃液で分解されにくくなります。されにくくなるだけで、分解されないわけではありません。
摂取したS‐αリポ酸は体内で使われないために無駄になるということだけではなくて、S‐αリポ酸には有害性も認められています。多くの研究で糖尿病患者、糖尿病予備群、脂質異常症患者だけでなく、肥満やメタボリックシンドロームの人も健康に被害を与え、死に至る危険性があるという論文もあります。動物試験では、死に至るという結果から、動物にはS‐αリポ酸は使うことができません。それなのに人間に使うことができることに疑問を感じる人は多いかと思いますが、それは人間で試験が行われていないからです。動物試験で危険性が明らかになっているものを、人間を対象に試験をすることはできません。試験をしていないので、人間に対する危険性は認められていないということから、禁止されていないのです。
では、安心して天然型のR‐αリポ酸を使うことはできないのか、R‐αリポ酸の有効性を実感することはできないのかというと、そんなことはありません。R‐αリポ酸のまま胃液で分解もされず、吸収される方法があります。それはシクロデキストリン(環状オリゴ糖)によって包接したもので、これなら安心して、効果を体感することができます。