感染拡大から考える雇用打ち切り

新型コロナウイルスの感染拡大の話題が、感染そのものから経済事情に移ってきています。インバウンドの減少、学校の休校、イベントの中止・延期などから販売が大きく落ちた業界の実態を伝えるだけでなく、その苦悩を取り上げるメディアが増えてきて、アルバイトやパートだけでなく、正社員の雇用まで続けられないという事情であることが報道されています。こういった報道がされるときには、社会的な強烈な評価を受けるようなことをする前に、心の準備をさせるためのジャブのようなものという考えもあります。
穿った考えの中には、政府による経済政策が失敗したことを隠すために、新型コロナウイルス拡大を使おうとしているのではないか、というものさえあります。経営が苦しいからと正社員の解雇をすると会社の評判が落ちて、もっと売り上げが落ちる原因になるという思いや、経営者の判断ミスが原因なのに正社員が解雇されるのはおかしいと訴訟を起こされることもあるので、正社員の解雇に踏み切れないというのが、これまでの経営判断でした。
正社員は3か月前に解雇予告をするか、3か月分の給与を先に払って解雇するというのが原則です。パートであっても1か月前の解雇予告か1か月分の支払いが必要になります。そんなことをしている状況ではないから仕方なく解雇ということを理由にするには、新型コロナウイルスの感染拡大の悲惨な影響を引き合いに出すしかない、ということです。
そうは言われても、解雇をしなければ企業が生き残れないような状況になったのは新型コロナウイルスによる経済被害だけなのか、消費税の増税による影響なのか、高齢社会対策が遅れていたためなのか、経済政策の失敗なのか、それとも全部が合わさってしまったからなのか、不況の原因が判明する段階はまだまだ先のようです。しかし、実際に解雇されて、次の稼ぎの見通しができない状況になって、いよいよ打つ手がなくなったときに、その本当の原因を実感できるのではないかということです。