最大の大腸のトラブルは下痢なのか

消化・吸収・排泄の一連の流れがスムーズに行われていれば、便通もスムーズになります。ところが、腸は非常にデリケートで、温度や湿度などの環境、身体の冷え、ストレス、腸内細菌の状態などによって、腸の病気にまでは進まないまでも、さまざまなトラブルが引き起こされます。そのトラブルの代表的なものは便秘と下痢です。
下痢は、便に含まれる水分が多くなりすぎて、軟便や水様便となって出るものをいいます。下痢は、腸管の炎症、ウイルスや細菌感染による疾患、分泌液の異常、糖尿病などの生活習慣病によっても起こりますが、ほとんどの場合には病気でなく暴飲暴食や不規則な食生活、身体の冷えなどが原因となっています。
食品に含まれている食物繊維は、便秘の人には改善の効果があるものの、下痢には消化が悪くなり、腸を刺激するため、食事で摂る食物繊維の量を少なくする必要があります。また、コーヒーやアルコール飲料、炭酸飲料などの刺激物も下痢を起こす原因となります。冷たい飲み物や食べ物も腸を刺激するため、下痢ぎみの人は温かいものを摂ること、ゆっくりと噛んで食べることが大切になります。
飲酒をした翌日は軟便になったり、下痢になることがあります。これはアルコールによって腸内の浸透圧が高まり、腸壁から水分が充分には吸収されにくくなり、腸内の水分が増えることによって便が軟らかくなりすぎるために起こることであり、これは浸透圧性下痢とも呼ばれます。
下痢の原因として注目度が高まっているのが過敏性腸症候群で、国民の20%ほどに起こっているといわれます。ストレス性下痢と呼ばれることもあるのですが、精神的なストレスによって自律神経の調整が乱れると、大腸と直腸の間のS状結腸の収縮が低下します。
大腸では水分を吸収して、適度な硬さの便にしていますが、S状結腸の収縮が低下すると、まだ水分が多いままで便が通過して下痢になってしまいます。
下痢になると腸内細菌の善玉菌も悪玉菌も多くが排泄されます。悪玉菌は増殖しやすいため、善玉菌が減ったまま悪玉菌が増えて腸内細菌のバランスが乱れますが、悪玉菌は腐敗を起こして有害物質を作り出します。有害物質は早く排泄されたほうがよいため、下痢が治まったようでも再び下痢を起こすようになります。
過敏性腸症候群では、下痢のあとに便秘が起こることがあります。これは悪玉菌の増殖によって便の量が少なくなり、硬くなるために起こっているのです。