温泉で温まるのは煮物と同じ理屈か

温泉は身体を芯から温めることができます。温泉の効果というと温泉成分の泉質と温度が主なものですが、温泉成分の湯の花を買ってきて、自宅で温泉と同じ温度で入浴すれば、それで温泉と同じように身体が温まるわけではありません。温泉のよさは、40℃ほどの温度であっても、あまり長湯をしなくても身体が充分に温まることです。40℃というのは微妙な温度で、38〜40℃は自律神経の副交感神経の働きを盛んにする温度です。副交感神経は全身の働きを抑制させる神経で、心身ともにリラックスさせる作用があります。この温度よりも上昇して42℃を超えると興奮作用がある交感神経の働きが盛んになります。
ぬるめの温度での入浴は身体が温まるのに時間はかかるものの、お湯の熱が徐々に皮膚から入ってきて、これが芯から温まることにつながります。40℃のお湯でリラックスしながら身体が温まるのに家庭の風呂では7〜8分はかかるのに対して、温泉では3〜4分でも充分に温まります。泉質と温度では変わりがないのに、どうして温泉のほうが早く温まるのかというと、熱量の違いです。水が温められて40℃になるために加えられた熱量は、水の量が多いほど多くなります。その熱量が温泉に入ることで身体に伝わってくるために、早く芯から温まることができるのです。
煮物をしたことがある人はわかると思いますが、大きな鍋で多くの水を使って煮立たせるには多くの熱量が必要になります。ガスで沸かすなら多くの量と時間が必要になります。電気を使ったIHでも多くの電気が使われます。その熱量が高ければ、煮物をするときに早く熱量が材料に伝わって、早く軟らかく煮ることができます。それと同じことが、温泉につかっている私たちにも起こっているのです。もちろん、温泉の入浴で身体が軟らかくなるわけではありません。
家庭の風呂で熱量を高めると温度が上昇して、副交感神経の働きを保ったままの入浴というわけにはいかなくなります。ぬるめの温度で、長めに入浴するしか方法がないのですが、入浴の機会を増やす、長く入っていられるように半身浴をするといった工夫も必要となるわけです。