甘いものを食べても血糖値が下がる薬というのは本当か

糖尿病の人から、「どれくらい菓子を食べていいですか」「どれくらいの量なら酒を飲んでもよいですか」といった質問をされることがあります。できるだけ無理なく、無駄なく生活習慣病対策を続けようというのが日本メディカルダイエット支援機構のモットーで、それに従ったセミナーや情報発信に努めています。そのこともあって、できるだけ楽をして糖尿病を改善したいという希望も寄せられるのですが、私たちの答えは「禁止」です。何が禁止なのかというと、糖尿病では甘いものもアルコールも禁止が大原則です。“大原則”という言葉を使うと、甘く考えてしまって、なんとか食べる方法はないのかと聞かれてしまうのですが、それへの返答は「食べてはいけない」です。
この答えが少し違ってくるのは、使っている糖尿病の治療薬の種類です。治療薬は糖質がブドウ糖に分解されるのを阻害するもの、インスリンの分泌を促進するもの、インスリンの効きをよくするものが長らく中心となって使われてきましたが、2014年に登場したSGLT2阻害薬は、これまでの「糖尿病=甘いもの禁止」の常識を覆すものとして注目されました。というのは、SGLT2阻害薬は血液中の余分なブドウ糖を尿とともに排泄する薬だからです。
SGLTはSodium-glucose transporterの略で、ナトリウム・グルコース共役輸送体とも呼ばれます。腎臓では血液から濾過された尿のもとの原尿が作られ、この中から身体に必要なものが尿細管で再吸収されて、残りが尿となって排泄されます。血液中のブドウ糖は必要なものなので再吸収されます。尿の中にもブドウ糖が含まれるものの、排泄されるのはわずかな量で、相当に血糖値が高まらない限りは多くの量は排泄されないので、尿糖(尿の中のブドウ糖)を測定しても糖尿病が判明されにくいのは、こういった理由があるからです。
尿細管でブドウ糖を再吸収しているのがSGLT2という部分で、ここに働きかけてブドウ糖の再吸収を減らして、排泄される尿糖を増やすのがSGLT2阻害薬の働きです。甘いものを食べても血糖値を下げるということだけでなく、やせる効果もあるというので、ダイエット薬として認識している人までいるのですが、SGLT2阻害薬を使わなければならないほどの糖尿病の人は血管の老化が進んでいる可能性が高く、高齢者では血糖値を上げないようにする食事と運動も重要になります。一時的に血糖値が急上昇することで血管にダメージがあるのは進んでしまった糖尿病の特徴だからです。