発達栄養学24 咀嚼と栄養摂取の関係

咀嚼(そしゃく)は歯を使って噛んで食べることを一般には指しています。これが定義だとすると普通に食べていれば咀嚼をしたことになりそうですが、実際には咀嚼は、よく噛んで胃で消化されやすい状態にしてから飲み込むこととなっています。あまり噛まないまま飲み込むことは、咀嚼ではないということです。
3歳児は、しっかりと噛んで食べることを教えなくても10〜12回は噛んで、それから飲み込んでいます。幼児が食べる食品は、それほど硬いものでなくても、噛む回数は多めです。それと比べたら、成人は硬いものを食べているので、20回でも30回でも噛んでから飲み込んでもよさそうです。しかし、実際には5〜6回だけ噛んで、すぐに飲み込んでいる人を多くみかけます。
噛むという行為は同じような歯の使い方をしているわけではありません。まず、前歯で野菜を切ったり、粗く砕いて、それから奥歯で擦りつぶすようにしています。犬歯は、その名のとおりで、犬が肉を噛み切るときに使うのと同じように肉や魚を食べる歯となっています。
前歯での粗噛みが5〜6回で、そのあとに奥歯で穀類や豆類などを擦りつぶしながら軟らかくしていきます。5〜6回しか噛まないで飲み込むということは、粗噛みだけで、飲み込んでいるので、咀嚼にはなっていないということです。
咀嚼を行っているときには、唾液が多く分泌されて、胃の消化液を補っています。そのために消化されやすくなりますが、咀嚼が充分に行われていないと消化が不十分になり、食品に含まれる栄養素が外に出てこないことになり、さらに胃液が多く必要になって、胃に負担がかかるようになります。このことが栄養素の吸収を低下させて、栄養摂取も低下させる原因にもなっているのです。