糖尿病になると太るのかやせるのか

「糖尿病は太っているのか、それともやせているのか」という質問を受けたことがあります。糖尿病というと食べすぎ、運動不足で太っているかもしれません。しかし、その多くは血糖値が高くなりすぎた高血糖症によって消費されるエネルギー量が減り、肝臓で合成される脂肪酸が増え、血糖値を下げるために膵臓から多く分泌されるインスリンによって太るというメカニズムがあります。
糖尿病とインスリンの関係というと、ブドウ糖を細胞に取り込ませるためのホルモンで、血糖値が下がるということが考えられます。そのインスリンの分泌が低下することによって、ブドウ糖が細胞に取り込まれにくくなり、その結果として血液中のブドウ糖が増える、つまり血糖値が高くなり、多くなりすぎたブドウ糖が尿とともに排出されるのが、糖尿病という名前のとおりの結果となるわけです。
インスリンが多く分泌されると肝臓で合成された脂肪酸はグリセロール1個が脂肪酸3個を結びつけて中性脂肪となり、この中性脂肪が脂肪細胞の中に蓄積されて、太ることになるわけです。この流れを見ると糖尿病は太るように思われがちですが、この段階では糖尿病ではなく、高血糖症の段階です。
では、高血糖症で止まらずに、本格的な糖尿病にまで進んでしまうと、今度はやせる方向に進んでしまいます。糖尿病になると膵臓からインスリンを分泌するβ細胞が疲弊して固まり、固まった部分はインスリンを分泌することができなくなります。このようなことになるのは血糖値が高くなりすぎた状態が長く続いたからで、元には戻らなくなります。インスリンには脂肪酸を合成する働きだけでなく、血液中の中性脂肪を脂肪細胞に取り込むのを促進する働きがあります。ということは、脂肪が多く含まれる肉などの食品を多く食べても、なかなか太りにくいということになります。
高血糖症の段階では、どんどん太っていた人が、急にやせるということがあり、こうなると糖尿病となってしまった結果ということができます。つまり、糖尿病は太っている人がなりやすくても、糖尿病になるとやせてしまうということです。