糖尿病患者に認知症が多い理由

糖尿病は、尿に糖が混じるのは、あくまで身体の二次的な反応であって、根本は細胞のエネルギー源になるブドウ糖が取り込まれないために、血液中のブドウ糖が濃くなることです。そのために尿に混じるブドウ糖が増えるし、血糖値も高くなります。ちなみに、血糖は血液中のブドウ糖のことで、その量が多いと糖尿病と診断されます。全身の細胞に必要なエネルギー源となるブドウ糖が充分に取り込まれないということは、細胞にとっては栄養不足になり、その量が少なすぎると飢餓状態にもなります。
血糖値を下げる働きがあるインスリンは膵臓から分泌されるホルモンで、膵臓の細胞もブドウ糖をエネルギー源にして働いているので、糖尿病になってブドウ糖が取り込まれにくくなるとインスリンの分泌量が減り、どんどんと悪化していくことにもなりかねません。
細胞レベルで考えると、脳もそれぞれの脳細胞によって構成されていて、ブドウ糖が必要になります。脳のエネルギー源はブドウ糖だけです。ということは、脂肪を構成する脂肪酸もたんぱく質を構成するアミノ酸も脳ではエネルギーにはなっていないということで、ブドウ糖だけが脳細胞を働かせることができるのです。
脳を働かせるためにはブドウ糖が含まれる糖質のご飯、パン、麺類などを食べなければならないのに、血糖値が高くなると糖質を減らそうとする人がいます。その考えを助長するかのごとく、糖質制限をすすめる医者がいて、しかも「糖質制限は糖尿病治療から生まれた」と言っています。こんな話を聞くと、糖尿病治療には糖質制限が当たり前のように医療機関で行われているようにも思われがちですが、臨床栄養の世界では糖尿病の患者に、流行しているような糖質制限は行っていません。
糖尿病はインスリンの分泌が低下するために細胞にブドウ糖が充分に取り込めないために、細胞がエネルギー不足になっているので、そこにブドウ糖の量を極端に減らすようなことをしたら、さらにエネルギー源不足になってしまいます。ブドウ糖を多く摂らせればよいわけではないものの、必要な量のブドウ糖を摂らなければならないのは当たり前のことで、行き過ぎた糖質制限は細胞の働きを低下させます。
特に考えなければならない細胞は脳の細胞です。糖尿病になると認知機能が大きく低下することは知られていますが、その理由は解明されていませんでした。しかし、この脳の細胞にブドウ糖が必要なのに、ブドウ糖が不足するような食事をさせていることが認知機能を低下させることになっているのは当然のように考えられることです。
ブドウ糖を細胞のミトコンドリアに取り込んで、エネルギーとする働きはα‐リポ酸が担っています。詳しくいうと、α‐リポ酸の中でも天然型のR‐αリポ酸でなければ取り込まれないので、R‐αリポ酸が不足しないようにしなければなりません。R‐αリポ酸は若いときには体内で充分に合成されていますが、年齢を重ねるにつれて合成量が減っていきます。その減り方と、脳の認知機能の低下は同じような曲線となっています。脳に充分なブドウ糖を取り込んで、充分な働きをさせるためにはR‐αリポ酸が必要になるのです。
R‐αリポ酸は、以前は医薬品としてしか許可されていなかったのですが、今では食品として許可され、サプリメントの成分ともなっています。そのため、サプリメントを摂ることで、脳の細胞の働きを高めることができるのです。
糖尿病になっても誰もが認知症になるわけではありません。脳の唯一のエネルギー源であるブドウ糖が不足するようなことがないように、ブドウ糖を減らし過ぎないことと、R‐αリポ酸を充分に摂ることが脳機能を保つための条件となっているということです。