肉を先に食べるとやせるのか

テレビ番組で“ミートファースト”をテーマに医師や管理栄養士が登場して、ダイエット効果を紹介していました。気になって仕方がないことが山盛りでしたが、早速に他局のディレクターから番組で取り上げたことは本当なのかという問い合わせがありました。いくつものデータを使い、それを簡単明瞭にしたために、かえって真実が伝わりにくい状態になっていました。
ご飯(米飯)の前に肉を食べるとブドウ糖が血液中に取り込まれるのが遅くなって血糖値の上昇が抑制されます。血糖値が上昇すると膵臓からインスリンが多く分泌されるのですが、インスリンには細胞にブドウ糖を取り込ませる働きと同時に、肝臓で合成される脂肪酸の量を増やすことから、ブドウ糖の過剰摂取は太る要因となります。
もう一つダイエットに関わる理由としては、小腸から分泌されるインクレチンがあげられます。テレビ番組でも、そのことを紹介していましたが、肉を食べるとインクレチンのうちのグルカゴン様ペプチドが分泌されます。グルカゴン様ペプチドには食後の血糖値の上昇を抑制する働きがあるので、これがダイエットにつながるという説明です。これを紹介した論文でも明らかにされていることですが、この論文には続きがあって、肉を食べるとグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチドも多く分泌されることが紹介されています。グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチドには脂肪蓄積作用があることから、肉を食べると太りやすいことになります。特に糖尿病患者でインクレチンが肥満を助長することが紹介されています。
テレビ番組では、そのようなことを伝えるはずもなく、インクレチンのプラス面だけを紹介していたのですが、それでも番組の中ではふくよか(というよりも超ぽっちゃり系)女性タレントが肉を先に食べることでダイエットに成功したという実例をあげていました。しかし、食べている量を見ると、肉は多く食べて、その分だけ米飯の量を大きく減らしていました。ご飯はブドウ糖が多く含まれていて、血糖値を大きく上昇させるので、ご飯を減らせば血糖値の上昇が抑えられ、摂取エネルギーが同じだとしたら糖質制限のほうが太りにくくなるのは当然のことです。