肝機能値が正常なら脂肪肝の心配はないのか

お酒を毎日のように飲んでいても血液検査で肝機能が正常の範囲にあると、自分は肝臓が丈夫だと考える人がいます。そんな人に対して、「今は安心な状態であっても先々はわからない」といって、飲酒をやめる、もしくは控えるように言う人もいます。実際は、どうなのかというと、先々はわからない、ということではなくて、すでに肝臓に異常が起こっている可能性はあります。それが肝機能値に出ていないだけ、ということが多いのです。どのような異常かというと、それは脂肪肝です。
脂肪肝は、肝臓に中性脂肪が多く蓄積された状態を指しています。肝臓では糖質や脂質を材料にして中性脂肪を合成しています。中性脂肪は蓄積型の脂肪で、重要なエネルギー源となります。中性脂肪は合成されたら血液中に放出されているので、通常は肝臓の3〜4%ほどの脂肪が蓄積されているだけです。それが5%以上になると脂肪肝と呼ばれます。超音波検査機器のフィブロスキャンで肝臓に蓄積した脂肪量を測定できます。この検査によって240db/m以上だと脂肪肝と判断されます。中には300db/mを超える人もいて、300db/mだと肝臓の60%以上に中性脂肪が蓄えられている状態といいます。
中性脂肪が蓄積した肝細胞は、正常な肝細胞としての働きができなくなります。脂肪肝では肝臓の働きが大きく低下するということですが、肝機能の検査でわかるのは肝臓の中に含まれる成分の量で、成分の量が多いということは、それだけ多くの肝細胞が破壊されている証拠となります。
脂肪肝になると正常に働くなり、活動を止めた(死んだ)肝細胞が増えて、これを除去するために免疫細胞のマクロファージが働きます。これがきっかけとなって肝硬変、肝臓がんへと進んでいくことにもなります。
マクロファージは、ただ外敵と戦うだけの免疫細胞ではなくて、内部に外敵を取り込んで、その情報を全身に伝える役割があります。情報を伝えるのはサイトカインという伝達物質ですが、サイトカインによって情報が伝わると、各臓器では外敵がいないにも関わらず、マクロファージが働き出して、全身で細胞の破壊が起こることになります。これが、がんや血管の異常を起こす原因となります。そのことから、全身の臓器のがんが発生しやすくなるということです。