腸に影響を与える食物繊維の有効性

不溶性食物繊維は便通をよくし、大腸内に有害物質がとどまる時間を短くするとともに、腸内で腐敗を進める腸内細菌の悪玉菌を減らし、腐敗によって発生する毒素(有害物質)を減らす作用があります。また、毒素による大腸壁への刺激を減らすことから、大腸がんの発生を抑える効果があると説明されています。
日本人は終戦後、食生活が大きく変わり、徐々に食事の洋風化が進んで肉食が増え、それが大腸がんを増やす結果となったのは事実です。悪玉菌を増やしやすい肉食が増えた分だけ、善玉菌を増やしやすい食物繊維を多く摂って、便通を改善することが解決の第一の手段といえるのですが、食物繊維の摂取量は厚生労働省の指針では男性で20g、女性で18gとされていて、野菜の量にすると1日350gになるのですが、これには達していません。
食物繊維の中でも摂取量の不足が目立っているのは水溶性食物繊維です。水溶性食物繊維には、便を軟らかくして便通よくしてくれる作用があります。この他に大腸の粘膜を保護する、食べたものが胃から腸に運ばれる時間を長くして血糖値の急上昇を抑える、胃の中で水分を吸って膨らむことで少ない量で満腹感を得やすくする、有害物や脂肪などを包み込んで吸収されにくくする、といった多くの働きがあります。是非とも多く摂りたいところですが、水溶性食物繊維が多く含まれる海藻、キノコは伝統的な日本食に多く使われる食材であるのに、現在の食生活では意識しないと摂りにくいものとなっています。
便通の機会は一般には朝食後です。朝食を食べると、胃の中に食事が入ってくることに連動して大腸が動き出す「胃‐大腸反応」が起こります。ところが、朝食を食べていない人は増え続けていて、中でも20代から40代の朝食欠食率は高くなっています。朝食を食べていないと、1食が減る分だけ食物繊維の摂取量が減りそうですが、朝食は軽く済ませる人も多く、これでは食物繊維は摂りにくくなっています。意識して、食事量が多い昼食と夕食に不溶性食物繊維と水溶性食物繊維が含まれた食品を食べるようにしたいものです。