雪が溶けると“春”になる

教科書的には「雪が溶けると水になる」が正解です。化学表記のH₂Oは一般には水だとされていますが、雪もH₂Oです。H(水素)2個とO(酸素)1個が結びついたものの液体が水で、個体が雪です。気温が低くなると雨として降るはずのものが雪に変わるということですが、固体となるのは氷も同じで、温度が下がると水が氷に変わります。
雪でも氷でも溶ければ液体の水になるわけですが、年齢を重ねた人の中には「雪が溶けると春になる」というほうがしっくりとくるという人もいます。特に東北や北陸の豪雪地域の人にとっては、あんなにも苦しめられていた雪が消えてなくなることで幸せな春を強く感じるという精神面での変化を強く感じる季節でもあります。
この春になると雪が水になって消えてなくなることを稼ぎにしていた政治家が、かつていました。豪雪地帯の特に積雪量が多いところにダムを建設させるようにしたときに、豪雪が水になって多くの水が利用できるということで、わざわざ人が行きにくい山奥にダムを造り、そのために道路を造らせました。一部がトンネルになっているものの、ほとんどは雪が積もって、日に何度か除雪しなければならない難所となっています。
この雪を谷に落とするのではなく、トラックに積んで、大きな川や海まで運んで処理をするというので、相当数のトラックと作業員が必要になります。これを提供した土建会社の代表が、実は政治家だったということですが、これは必要なことであるので儲けていると批判するような人は、ごくごく少数派でした。
しかし、本当に道に積もっていた雪を、すべて運んで捨てていたのか、それとも谷に落としていたのかは、除雪のトラック以外は現地に行くことができないので確認することができません。春になると雪が少なくなって現地に行くことができるといっても、そのときには、もしも谷に大量に落とされた雪があったとしても証拠が溶けて流れているので、確認することはできません。春になるのを待ち伸びていたのは豪雪地帯の人だけではなかったという話です。