食べる順番ダイエットは正しいのか

ダイエット法は我慢を強いるのではなく、継続しやすいものでなければ効果が出にくく、リバウンドにもつながります。食べるものを変えること、量を減らすことは大変でも、食べるものも量も同じなら苦労はいらないということで流行しているのが「食べる順番ダイエット」です。食べる順番ダイエットは、料理研究家が自分の実践から得られた成果だと言われています。流行すると実は私が……という人が出てくるのは常で、元祖や本家は複数います。しかし、どの方の説でも共通しているのは初めに野菜サラダを食べることです。
野菜には食物繊維が多く、エネルギー量が少ないので多く食べても太らない、お腹が膨れるので食べすぎを抑えられるというのが順番を変えるメリットとして紹介されています。変わった考え方をする人の中には、野菜サラダを食べなかった人が野菜を多く食べれば、やせるのは当たり前と言う人もいますが、食物繊維は消化されないので血糖値が上昇しにくく、これがダイエットに結びつくというのは正しいことです。
食べる順番ダイエットを扱った書籍の中には、食物繊維が脂肪の吸収を抑えてくれるということを強調しているものもありましたが、これは野菜に多く含まれる不溶性食物繊維による作用ではなく、水溶性食物繊維の作用です。水溶性食物繊維が豊富に含まれるのは海藻やキノコなどです。以前はコンニャクも水溶性食物繊維として紹介されていました。しかし、凝固剤を使って固めたコンニャクは不溶性食物繊維と同じ性質となります。つまり、水溶性食物繊維の特徴である水分を吸って膨らみ、脂肪を吸着する働きもなくなります。水溶性食物繊維の性質があるのは粉のコンニャクです。
野菜サラダを先に食べるときに注意したいのは、それにかけるドレッシングやマヨネーズなどの量です。ご飯、主菜の肉や魚、サラダ、汁物のメニューのときに、通常の食べ方ではご飯、主菜、ご飯、汁物、サラダといったように好きな順番で食べていると、日本人は“口中調味”の方式で食べています。おかずの味が濃いときにはご飯を食べ、口の中で味が薄くなったときには汁物を飲むというように味を整えながら食べる方法です。ところが、初めに味が薄い野菜サラダだけを食べるとなると、どうしてもドレッシングなどの量が多くなります。ドレッシングは種類によってはエネルギー量が高いので、これには注意が必要です。
食べる順番ダイエットは食べすぎを減らす効果はありますが、これはお腹で行うダイエットです。身体には食べすぎたときにストップをかける仕組みがあり、それに影響をしているのは血糖値です。血糖値が上昇すると脳の満腹中枢がブドウ糖の量に反応して、食欲にブレーキがかかります。これは脳で行うダイエットとなりますが、先に血糖値を上昇させるものを少し食べておくことで満腹中枢の働きが早くなり、全体的に食べる量を抑えられるようになります。
先に野菜サラダを食べることで、血糖値が上昇しないのに胃が刺激されて胃液が分泌されることになって、食欲に火がつくことがあります。その結果、いつもよりも多く食べすぎてしまうことにもなりかねないので、野菜サラダを先に食べればよいということだけではないことを知ってほしいところです。食べる順番の効果を過信すぎることなく、食べる中身という基本中の基本を重視するのがダイエットの原則であり、生活習慣病を予防・改善するためのキーポイントです。