食欲の秋は何が作用しているのか

食欲は脳の視床下部にある中枢がコントロールしていて、それに関与しているのはブドウ糖です。食品の糖質に含まれているブドウ糖が小腸から吸収されて血液中に入り、血液中のブドウ糖の量、つまり血糖値が上昇すると脳には食べ物が多く入ってきたという情報が伝わって、満腹中枢が刺激されて食欲が抑制されるようになります。その逆に、血糖値が降下すると脳にはブドウ糖が減った、つまり食べる量が不足しているという情報が伝わって、摂食中枢が刺激されて、食欲が亢進するようになります。
おいしいものを目にすると、実際には胃の中に充分すぎるくらいに食べ物が入っていても、食欲が湧いて食べたくなる、満腹だったはずなのに食べることができたという“別腹”が起こることもあります。これは食べられるときに溜め込んでおこうという飢餓状態から遺伝的に伝えられてきた本能を働かせるために、オレキシンというホルモンが分泌されて、胃を動かして食べ物が入るスペースを作ろうとするからです。
もう一つの別腹に関わるホルモンはセロトニンです。精神的に不安定になると安定させるために分泌されるホルモンで、ストレスがかかっている人ほど分泌されやすくなっています。セロトニンは身体の活動が盛んな春から夏に分泌量が多くなるのですが、秋になってセロトニンの分泌が低下すると、脳に多く取り込もうとする働きが起こります。セロトニンは脳に入るときにブドウ糖があると優先的に取り込まれる特徴があります。セロトニンの分泌が低下すると、取り込みを盛んにするためにブドウ糖が多く必要になり、そのために秋になると食欲が増してくるというメカニズムになっています。
この仕組みからすると、冬にも食欲が高まりそうですが、秋に食欲が増すのは、セロトニンの不足に慣れていない段階だからだと考えられています。季節の変わり目には反応が強く出て、食欲が増すと同時に、秋にはおいしいものが多くなることも関係しているようです。