高齢者は目線を上げて歩かないと危ない

高齢者が横断歩道を渡っているのに、なぜか斜めに渡ったり、赤信号になってもゆっくりと歩くということがあって、これが高齢者の交通事故を増やしています。信号がある横断歩道で起こった高齢者の交通事故のうち歩行者に原因があるのは50%を超えていて、多い地域では80%に達しています。これは認知機能が低下していることや、青信号のうちに渡りきれないほど歩行能力が低下していることが指摘されています。一般の横断歩道の青信号の時間は10mを10秒で渡ることが基本とされています。しかし、高齢者の歩行速度は秒速0.8m、つまり80cmとされているので、10秒では8mしか進めなくなります。そこで青信号が点滅をしてきたところで早歩きをすると、なんとか渡りきることができます。
それなのに赤信号になっても、ゆっくりと歩いている理由としてあげられているのは、点滅している信号機が見えていないことです。若いときには正面を向いているときには下が45度、上が45度の90度の範囲が見えています。ところが、高齢になるとだんだんと上が見えにくくなります。これは目の問題ではなくて、まぶたが原因です。まぶたを支える筋肉の上眼瞼挙筋が弱くなり、まぶたが下がってくることによって30度くらいにまで狭くなります。
こうなると、横断歩道を渡る前には上にある信号機は見えていても、渡っている途中に視界から信号機が消えてしまいます。そこで目線を上にして、渡りきるまで信号機を見るようにしたいものです。ところが、高齢になると姿勢が悪くなり、首が下を向いて目線が下がってきます。目線を上げるためには姿勢を正して歩くことが必要で、その歩行姿勢を身につけるために、ポールを使って歩くノルディックスタイルのウォーキングを私たちはすすめています。
この話をすると、高齢者は外出するときにはポールを使って歩かないといけないのか、と言われることがあります。私たちはポールを使ったウォーキングをすすめている、というよりも、ポールを使って歩くことによって正しい姿勢で歩けるようにして、ポールなしても安心して歩けるようにすることを目的として指導をしているのです。