252 飲酒と脂質異常症の関係

血液中の脂質が基準値を超えることを脂質異常症と呼んでいますが、アルコールが深く関係しているのは中性脂肪とHDL(高比重リポたんぱく)です。肝臓では身体に必要な中性脂肪を合成していますが、アルコールが肝臓に運ばれてくると肝臓の中にある脂肪酸合成酵素の働きが盛んになって、合成される中性脂肪が増えていきます。その合成量はアルコール摂取量に比例しています。合成された中性脂肪は肝臓の中にたまるだけではなく、血液中に放出される量が多くなって、脂肪細胞に蓄積される中性脂肪の量を増やすことになります。
HDLは一般にはHDLコレステロールと呼ばれていますが、正式にはHDLコレステロールとはHDLの中に含まれているコレステロールのことを指します。HDLは善玉コレステロールとも呼ばれ、悪玉コレステロールとも呼ばれるLDL(低比重リポたんぱく)の増えすぎを抑える作用もあります。飲酒によってHDLが増えるのは1日に1単位(純アルコールにして20g)の適量の飲酒の場合で、それ以上の飲酒は肝臓に負担をかけて、摂取エネルギー量の過剰にもつながります。
飲酒によって中性脂肪が増えるのは食欲が高まることもありますが、食べすぎると肝臓で合成されるLDLが増えることに関係しています。LDLは肝臓で合成されたコレステロールを全身に運ぶ働きをしています。コレステロールは全身の細胞膜の材料で、ホルモンの原料にもなります。コレステロールを多く作って、それを運ぶためにLDLが働いているのです。
血管を丈夫にするためにはコレステロールは必要ではあっても、コレステロールが多くなりすぎると今度は動脈硬化のリスクが高まって、逆に血管を傷めることにもなります。適度な飲酒は1単位の量で、日本酒なら1合、ビールなら中ビン1本、ワインならグラス1杯(1本の4分の1)、ウイスキーならダブル1杯となります。適度な飲酒によってHDLを増やして、LDLを増やしすぎないようにするのが大切だということです。