味覚は五味か六味か七味か

味覚は昔から“五味”とも呼ばれていました。「ます」ではなく「ました」と書いたのは、今では五味に一つプラスの六味が普通になり、さらに一つの味覚が増えたことがテレビ番組などで取り上げられるようになっているからです。五味は、甘味、塩味、酸味、苦味、旨味(うまみ)とされています。旨味は日本の出汁(だし)文化が生み出した味でもあり、旨味の代わりに辛味が五味に加えられることもあります。ということで、旨味も辛味も加えたのが六味となります。
七味となると何が加えられるのかというと、あまり聞きなれないかもしれませんが“脂味”です。脂肪味と呼ばれることもあります。脂味は脂肪を感じ取れる味覚のことで、この味覚が敏感だと脂肪が多くない料理でも脂肪を感じて、おいしく感じることができます。脂味が鈍感だと、脂肪が多く使われていても、脂肪を感じにくくなることから、どうしても脂っこい料理を食べすぎることになります。脂っこい料理を食べるほど脂味は鈍感になっていくので、ますます脂っこい料理を脂肪を感じずに食べることになるので、太りやすくなる、血液検査の中性脂肪値や悪玉コレステロールとも呼ばれるLDL(低比重リポたんぱく)が増えやすくなり、これが生活習慣病のリスクを高めていくことになります。
ここまでの話は脂味を研究する医学者の意見ですが、栄養学者の中には、これとは違った発想をする人もいます。脂味に鈍感だから食べすぎるというのではなく、脂味に敏感だから、おいしく感じて食べすぎるという意見です。脂肪のエネルギー量は1gあたり約9kcalとなっていて、糖質とたんぱく質の約4kcalの2倍以上のエネルギー量となっています。脂肪をおいしく感じるということは、同じだけの量を食べても多くのエネルギー量を摂ることができるということで、今のように食べたいときに食べたいものを好きなだけ食べられるという時代とは違って、少ない量であっても多くのエネルギー量を蓄えることができる優れた能力です。
この能力があるから人間は生き残れてきたわけですが、今では脂肪の摂りすぎが問題となっているので、脂味は重要になります。BMI(体格指数)25以上の肥満になると脂味の反応が悪くなることが知られていて、これ以上は脂肪を増やしてほしくないという身体の反応だということです。