おいしい牛肉は脂肪酸の種類が違っている

身体は食べたものによって作られています。そのために、健康を維持するためには、それぞれの栄養素は一定量が必要で、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」(2020年版)では糖質、脂質、たんぱく質のバランスのほかに、ビタミン、ミネラルなどの摂取の基準が定められています。栄養素のバランスが取れていればよいということではなくて、どんな食品から摂取しているかも重要となります。
和食が中心であった時代から、洋食が多く食べられるようになり、肉食が多くなると、身体に影響が出るのは当然のことです。同じ肉食であっても豚肉と牛肉では含まれている脂肪酸の種類が違っています。動脈硬化のリスクを高める飽和脂肪酸は牛肉のほうが多く、豚肉は飽和脂肪酸が牛肉よりも少なめで、動脈硬化のリスクを抑える不飽和脂肪酸が多めになっています。
牛肉の飽和脂肪酸の量も時代によって変わってきました。牧草を食べていたときには、不飽和脂肪酸のオメガ3とオメガ6のバランスがよい牛肉でした。自然の食品はオメガ3とオメガ6と割合が1対2になっていて、これを食べている動物の身体もバランスが取れていました。ところが、これまでに食べてこなかったものに食べるとオメガ6が多くなって、身体の中のオメガ6が増えていきます。牛を大きく育て、しかもおいしい肉にするために牛のエサは穀類になりました。
穀類はオメガ6が多く含まれています。植物油も、大豆油、コーン油、ごま油、綿実油はオメガ6が多くなっています。オメガ3の植物油の成分はα‐リノレン酸で、エゴマ油、亜麻仁油に多く含まれています。動物性では魚に多く含まれるEPAとDHAです。
食事で摂る不飽和脂肪酸の割合が、オメガ3が1、オメガ6が2の割合を超えると動脈硬化のリスクが上昇することが知られています。牛肉を多く食べると動脈硬化のリスクが高まることの理由は複数あげられているのですが、その大きな理由となっているのがオメガ6の量ということです。