お酒で血管は緩んだり締まったりするのか

飲酒は適度な量であれば血圧を低下させると言われています。言われている、というよりも、それは事実で、日本酒換算(15度)で1合の量の飲酒で、いわゆる“ほろ酔い”状態のときには血管の緊張が解かれて、血圧は下がるようになります。この話をセミナーでしたときに、「もっと飲むと血管が締まるのか」という質問がありました。1合の量で下がった血圧は、2合の量までは徐々に上がってきて元の状態になり、それを超えた量になると逆に血圧は上がっていきます。
この結果から見ると、2合以上の飲酒は血管が締まってきて、血圧が上がっているように思われるかもしれません。しかし、実際には2合を飲んだときには1合のときよりも血管は緩み、それ以上を飲んだときには、もっと血管は緩んでいます。それなのに、どうして血圧が元にも取り、逆に上がるのかということですが、血管が緩みすぎると血液が的確に全身に送られなくなることから、血圧を上昇させて調整するためです。
血管が適度に緩んだときには心臓の圧力が通常の状態であっても血液がスムーズに流れます。ところが、血管が緩みすぎると心臓の通常の圧力では血液が充分に送られにくくなって、全身に酸素と栄養成分が届けられなくなります。そこで血圧を上昇させて勢いよく、血液を送ろうとします。2合までの飲酒では血管の緩みの程度は大きくはないので、通常の血圧に戻るだけです。この状態を超えて血管が緩むと血流が低下するので、自律神経の交感神経の働きを盛んにして血圧を上昇させます。この後は、飲めば飲むほど血圧が上がっていくようになります。
そこで飲酒量は日本酒換算で、できるなら1合まで、飲んでも2合までにしておくことです。ちなみに日本酒換算での1合(180ml)は、ビール(5度)では中ビン1本(500ml)、焼酎(25度)では0.6合(110ml)、ワイン(15度)ではグラス1杯(180ml)、ウイスキー(43度)ではダブル1杯(60ml)とされています。