ミトコンドリアを増やす効果的な運動法

運動は無酸素運動と有酸素運動に大きく分けられます。ミトコンドリアの能力を効果的に高めるのはAMPキナーゼという酵素が働きやすい有酸素運動で、ウォーキングなどを長く続けるか早歩きをしてエネルギー不足状態を起こすと、ミトコンドリアが活性化され、ブドウ糖と脂肪酸の代謝が進んでいきます。有酸素運動は定期的に実施することが大切で、有酸素運動を休んでいる期間が長くなるとミトコンドリアの体積が減少することが知られています。
また、ミトコンドリアの体積は加齢によっても減少することが確認されており、年齢を重ねるほどミトコンドリアの能力が低下していくことになります。中高年者や高齢者はミトコンドリアのエネルギー産生の能力が低下することから、必要なエネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)が充分に産生されなくなり、これが老化を進める要因となっています。そのため、年齢を重ねるほど有酸素運動によってミトコンドリアの体積を増やすようにすることが重要となるわけです。
ミトコンドリアの体積を増やしてミトコンドリアでのエネルギー産生を増やすことによって、老化の抑制とともに、血液中の糖と脂肪の濃度を適切にコントロールして生活習慣病の予防を図ることができるようになります。ミトコンドリアでのエネルギー産生は酸素が用いられることから有酸素運動が有効となるのですが、無酸素運動もAMPキナーゼの働きによって有効であることが確認されています。
無酸素運動は息を止めて行う筋肉トレーニングや短距離走などを一般に指していますが、本来なら有酸素運動であるジョギングも身体的な負担が高まると無酸素領域の運動となります。運動をやり慣れていない人にとっては1時間程度のウォーキングであっても無酸素運動となる場合もあります。
無酸素運動は酸素を用いなくてもできる運動のことですが、有酸素運動によってミトコンドリア内でATPが多く産生されるのに対して、無酸素運動では逆にATPが消費されます。
無酸素運動によってATPが消費され、一つリン酸が外れたADP(アデノシン二リン酸)、さらには二つリン酸が外れたAMP(アデノシン一リン酸)が増えることによって細胞内エネルギーのレベルが低下します。その結果、エネルギー不足のサインを細胞内のエネルギーセンサーであるAMPキナーゼが察知して、ミトコンドリアでの脂肪燃焼能力が高まっていきます。この状態で有酸素運動を行うとATPが多く産生されるようになることから、脂肪を効果的に燃焼させるためには無酸素運動と有酸素運動を交互に行えばよいことになります。