健康寿命か自立寿命か

健康寿命という言葉は、実態を表していないのではないか、という議論があります。健康寿命は介護を受けたり、寝たきりになったりしないで自由に日常生活を過ごせる期間を示していて、この健康寿命を過ぎると、あとは寿命まで介護や医療に依存して生活しなければならない不自由な期間ということになります。寝たきりや介護を必要とする状態でなくても、遠くに出かけることもできず、せいぜい家の周囲しか自分の足で歩くことができないという状態となります。
その期間が男性で9年以上、女性で12年以上もあるという国の調査結果があり、男性が平均寿命の81歳まで生きたとすると72歳で自由に動けなくなるということになります。あくまで平均ですが、平均以下となる可能性があることを考えると、60歳を超えたら、よほど健康に気をつけないと楽しい老後を過ごせないことになります。
そもそも病気の定義は、ということですが、WHO(世界保健機関)は「恒常性が崩れて元に戻らなくなっているか戻りづらくなっている状態で、自立できなくなった状態」を病気としています。生活習慣病の高血圧症や糖尿病、脂質異常症(高中性脂肪血症、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症)になっても自立できないことはなくて、合併症までが起こっていて心筋梗塞や脳梗塞が起こっていると、これは病気ということになります。つまり、高血圧症、糖尿病、脂質異常症で自立ができている間は病気ではなくて、健康だということになります。
病気の定義から健康を考えると、自由に動ける期間は“健康寿命”でよいはずです。しかし、健康寿命を過ぎると自立できていないというところに着目するなら“自立寿命”という呼び方をしてもよいかもしれません。だた、この自立という言葉、自分の力で生活をしていることを指す言葉としても使われていて、自立できる期間と言われると、別の意味に取られることもあるので、まだまだ検討が必要です。