少子化が国民の健康に与える影響

国民全体の健康状態を考えるとき、どうしても「高齢化」というキーワードが出てきて、それに振り回されがちになります。現在の日本はWHO(世界保健機関)の定義に従うと、高齢化社会でも高齢社会でもなく、超高齢化社会となっています。そして、最後の段階の超高齢社会が目の前に迫っています。そのときには高齢者の健康、それを支える世代の健康が重要であるとの考えが中心になりがちですが、長期戦略が必要な超高齢社会の対策は、さらに下の世代の健康を考えなければならないと以前から考え続けてきました。
超高齢社会で支えられる祖父母世代、それを支える親世代、さらに下の子供世代という分類ですが、高齢化が大きく進んだ今、祖父母世代は80歳代、親世代は60歳代、子供世代は30〜40歳代、その下の孫世代は10代後半にもなります。子供世代から健康づくりを始めるとしても、そのための知識教育は孫世代から始める必要があるという年齢構成になっています。
10代後半は勉強に習い事に遊びにと忙しい時期で、食生活調査をしてみても、親が食事を作っていて、それを食べているはずなのに、バランス栄養とは程遠い結果も見て取れます。次代を担う人材なので国の調査で重点的に調べてほしいところですが、国民健康・栄養調査は栄養素の摂取だけは乳幼児から調査されていても、私たちの専門であるダイエットの範疇になると20歳からのデータしか発表されていません。同じ食事内容であるだろうと想定して10代後半の親の世代の30〜40歳代の食事内容を当てはめてみても、あまりよい状態ではありません。
この年代は太り始める時期で、親がダイエットのために食事を減らしているのに合わせさせられて成長期なのに不足した栄養状態になっていることがあったり、親が仕事をしていることから子供が自分で簡単に食べられる朝食しか食べていないということもあります。学校給食に栄養補給状態のデータを見ると、多くの栄養素が給食に頼っている実態があり、学校給食がない日には栄養不足という例も珍しくありません。学校給食から卒業して、弁当や外食が始まると、その乱れはもっと激しくなります。
そんな食事をしていては、その子供(祖父母からしたら孫)世代の栄養状態だけでなく、その子供たちが成長して、支える側の30〜40歳代になったときに、本当に支えられる身体であるのかと心配になってきます。心配になってくる、という他人事の考えではなく、私たちは、そこになんとか手を差し伸べられる立場にいるので、まずは実践的なことを踏み出したいと考えています。
その話を健康寿命延伸による地方創生で関わっている自治体の方にしたところ、「では高齢者だけでなく親にも子供にも、そして孫にも話をする機会を設ける」という提案がありました。もちろん目の前にいる人に対しての教育や情報提供は必要なことはわかっていますが、それと同時に孫世代に向けて、正しい健康情報を提供することを始めることが重要と考えます。今、そのチャンスに巡り合うことができました。